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4月17日のまにら新聞から

「台湾独立に反対唱えよ」 EDCA強化の動き受け中国大使 台湾OFWの危うさ指摘も

[ 1709字|2023.4.17|政治 (politics) ]

比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用可能施設増強の動きを受けて、黄渓連駐比中国大使は「台湾は中国の一部」だとする中国の主張を比が認めなければ、台湾のOFWの安全と福祉が危うくなる可能性を指摘した

 比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用可能施設の追加合意を受けて、黄渓連駐フィリピン中国大使は14日、「台湾は中国の一部」だとする中国の主張を比が認めなければ、台湾の海外比人就労者(OFW)の安全と福祉が危うくなる可能性があるとの指摘を行った。

 15日の英字紙インクワイアラー電子版によると、「比中理解協会」開催の14日のフォーラムに参加した黄大使は、比政府が特に台湾に近いイサベラ・カガヤン両州の国軍基地を米軍が使用するのを認めることに対し、強い反発を示した。「フィリピンがOFW15万人のことを本当に考えているのなら、米国に台湾海峡近くの軍事基地へのアクセスを提供して火に油を注ぐのではなく、『台湾独立』に明確な反対を唱えることを勧める」と発言した。

 EDCA施設増強合意により、米軍は比国内9カ所での装備品の配置と米兵の巡回駐留が可能となる。黄大使は「米国は明らかに、新しいEDCA基地を利用して、地政学的な目標を達成するため台湾海峡に干渉し、フィリピンや地域全体の平和と発展を犠牲にし、反中政策を進めるつもりだ」とし「両側の人々が中国人であるため、われわれこそ海峡をめぐる紛争の終わりを最後まで望んでいる国だ」とも強調。

 黄大使はまた、「われわれは武力の行使を放棄するつもりはなく、あらゆる必要な手段を講じる選択肢を保持している。これは、外部からの干渉やあらゆる分離主義的な活動に対応するためだ」と付け加えた。その上で「ミンダナオ島の反政府勢力(イスラム分離主義者)に関する問題解決に、第三者が口出しすることは絶対に許されないだろう」とミンダナオ問題と台湾問題を同様に「内政問題」と位置づけた。

 ただ、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と比政府は、長年にわたる紛争解決の過程でマレーシアやインドネシア、日本など他にも数カ国の協力を得て、和平協定が2014年に結ばれた経緯がある。

▽ミンダナオ問題は別物

 ルーフス・ロドリゲス下院議員(カガヤンデオロ州選出)は「バンサモロ地域は比の一地域であり、自治区の強化版だが、台湾は共産党によって国民党が中国を追われた1949年以来、独立した共和国としてやってきており、自由で民主的な国だ」と声明の中で指摘。黄大使の比較は見当違いで根拠がなく、ミンダナオ島と台湾は「全く別物」と反論した。

 また、同議員はEDCA施設増強は台湾問題への干渉の意図ではなく、「200マイルの排他的経済水域である西フィリピン海(南シナ海)に対する中国の継続的な違法侵犯と比の主権侵害から自国を守るためだ」との認識を示した。

 エヘルシト上院議員も「なぜ『友人』であるはずの中国政府は、私たちが他の良識ある国々と結ぶ同盟に対し、脅迫を行うのか」とした上で「一貫して侵犯を続け、われわれの主権を軽んじている。何百もの外交的抗議も耳に入れず、中国を信頼することは難しい」と批判した。

▽台湾問題への干渉ない

 黄大使や比政治家の反応を踏まえた上で比政府は15日、「一つの中国政策」を遵守しており、EDCAに基づく拠点9カ所は、どの国をも対象に据えていないことを改めて表明した。

 国家安全保障理事会(NSC)のジョナサン・マラヤ報道官は、エドゥアルド・アニョ国家安全保障顧問の言葉を引用し、「比米間の防衛協力強化は、比領土の防衛に向けた比軍の能力の開発・強化を意図しており、地域にある国への対抗や封じ込め、他国の問題への干渉を目的としたものではない」と説明した。

 また、国防省のアルセニオ・アンドロン報道官は黄大使が言及したミンダナオ問題について、「私たちはこの問題が互いに異なることを強調したい。国際社会の参加を可能にしたミンダナオにおける和平プロセス全体にわたる文脈と豊かな経験は、紛争を平和的に解決する比政府の立場と一致している」と説いた。

 比政府は1975年に中国と国交を結び、台湾を国であるとの公式な認知を取り下げた。台北にあるマニラ経済文化事務所(MECO)によると、現在台湾には比人15万8410人が生活している。(岡田薫)

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