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3月4日のまにら新聞から

「正しいメッセージを送る手段」 比日米三国間の防衛メカニズム

[ 1563字|2023.3.4|政治 (politics) ]

「自由で開かれたインド太平洋に向けたパートナーシップの強化」フォーラム開催

「自由で開かれたインド太平洋に向けたパートナーシップの強化」フォーラムで質問に答える宮家邦彦氏(右)とロナルド・メンドーサ氏=3日、首都圏マカティ市で(オンラインから)

 首都圏マカティ市で3日、南シナ海における領有権問題をはじめ、米国と日本、フィリピンによる三国間での防衛メカニズムの可能性を探る「自由で開かれたインド太平洋に向けたパートナーシップの強化」と題したフォーラムが開かれた。同フォーラムは比シンクタンク「ストラトベースADR研究所」と在フィリピン日本国・米国両大使館による共催で、対面とオンラインでのハイブリッド形式で実施された。

 冒頭の挨拶で松田賢一次席公使は、「厳しい安全保障環境におかれる中、日本は昨年12月に新たな安全保障政策とそれに関連した指針を発表した。先月に日本を訪問したマルコス大統領は、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の維持と発展に向けた日本の取り組みに歓迎を表した」と経緯に触れた。

 登壇者の一人、日本のシンクタンク「キヤノングローバル戦略研究所」の研究主幹であり、立命館大の客員教授も務める宮家邦彦氏は「日本政府のプロパガンダではなく私人として話したい」と前置き。パワーポインターで、カナダで2018年に開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)での故安倍元首相の姿も映り込む写真、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が握手する写真を、ジョン・ボルトン氏の回顧録「それが起きた部屋」の表紙の両脇に添えた象徴的な対比構図を示すなどした。

 宮家氏は世界で起きていることを映画「スターウォーズ」シリーズの題名と照らし合わせ、「暗黒の覚醒(原題は「フォースの覚醒」)」、「核の脅威(同「ファントム・メナス」)」などと紹介し、独自の視点で会場を沸かせた。また、ロシアによるウクライナ戦争から学べることとして、①武力なくして防衛なし②情報戦なくして勝利なし③日本には米国がいるとの考え方ではなく、戦わなければ米国は助けてはくれない――との持論も展開した。

 宮家氏は比日の訪問軍の取扱いに関する協定について、日本政府は「とても前向きだ」との見方を示し、同取り決めの将来的な締結が「外国を威圧するための手段ではなく、国際法を遵守せず、力ずくで現状を変えようとする人たちに、正しいメッセージを送るための手段」と述べた。「そうすれば、彼らもより慎重になるに違いない。私たちが行うことは、海上での自然な取り締まり活動なのだから、心配はいらない」とも強調した。

 さらに宮家氏は比日米の三カ国での多層的な安全保障の確立は、「自然なプロセス」と語った。「(安全保障環境)が変化しており、人々からの理解が必要とされている。誤ったシグナルを相手側に送ることなく、政治的に正しくあるべきだ。時間はかかるかもしれないが、最も重要なのは、こちらにその意図があり、それを実行に移し、相手側に誤解を与えないように継続していくことだ」と力説し、オーストラリアも加えた四カ国での海上警戒の必要性にも触れた。

 経済学者で国連行政専門家委員会委員のロナルド・メンドーサ氏は、日本によるサステナブルでかつ包括的な開発などが比における恩恵となってきた事実を強調。同氏は「波瀾万丈の歴史があったにもかかわらず、日本はアジアで最も緊密で信頼できる民主的パートナーの1国となった」とし、これは「両国が築いてきた経済的、安全保障的なパートナーシップをはるかに超えるもので、人と人とのつながりだ。フィリピン人が他国を信頼するかどうかの世論調査では、日本が米国、カナダ、オーストラリアと並んでトップかそれに近い位置となり、近年は中国が最下位だった」とも付け加えた。

 その一方でメンドーサ氏は「このパートナーシップは不確実な時代に築かれるものであり、特に中国と米国の緊張の高まりによって地政学的リスクが高まっている現在、経済的な協力はより確実だとの認識は大切」とも話した。 (岡田薫)

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