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1月6日のまにら新聞から

「新時代の中比協力の青写真描く」 習主席との会談終え大統領帰国

[ 1764字|2023.1.6|政治 (politics) ]

マルコス大統領と習近平国家主席が会談。領有権問題は「解決策を見いだしていく」

王毅・中央外事工作委員会弁公室主任と握手するマルコス大統領(写真中央)。左は習近平国家主席=(大統領報道長官室提供)

 国賓として初めて中国を訪問したマルコス大統領は4日、北京で習近平国家主席と会談し、特に領有権問題を抱える南シナ海において漁業規制で苦境にあるフィリピン漁民に対する「解決策を見出していく」との中国側の約束を引き出した。5日午後4時57分に帰国したマルコス大統領は今回、農業やインフラ、開発協力、海上安全保障、観光などを含む14の二国間協定に署名した。大統領は「建設的な実りある話し合いになった」とし、両国の協力関係の良好性を強調した。

 習主席は、マルコス大統領に対し、「今回の訪問は両国間の歴史を称える旅だが、より重要なのは未来を切り開くこと」とし「共に協力を深め、新時代の中国・フィリピン協力の青写真を描くことで、国民により多くの利益をもたらし、地域の平和と安定に貢献できる」と述べた。

 マルコス大統領は「約50年の間に、中国とフィリピンは社会、経済、文化、人的交流といった様々な分野でパートナーシップを築いてきた。関係のさらなる発展を望んでいる」とし「この地域を新しい世界経済の原動力として維持すべき」と応じた。南シナ海における中国との共同探査の交渉継続が比にとって重要である点も挙げた。

 ▽比の漁民のために尽力

 会談後、南シナ海問題に絡んだ比漁師の窮状を明確に伝えたとするマルコス大統領は、メディアを前に「すでに抱える問題以上に大きな誤解のきっかけとなり得る過ちの発生を避け、両国間関係の前進に向けて何が出来るかを話し合った」と述べた。

 その上で大統領は「私たちの漁師が自然の漁場で再び漁ができるよう、妥協点を見つけ、有益な解決策を見出すと(習主席が)約束した」と成果を強調した。

 これに因み、両首脳が南シナ海で起こりうる誤解を回避するための「コミュニケーションライン」を確立することで一致した。同ラインは比外務省海洋局と中国外務省境界海洋局の間に開設される。両首脳は「この信頼醸成措置は相互信頼の向上に寄与する」とし、外務省間の協議と、南シナ海に関する二国間協議メカニズムの重要性、その平和と安定を守るための「南シナ海行動宣言(DOC)」の重要性なども再確認した。

 ▽比産品の市場アクセス増へ

 また大統領は、中国への高価値の比農産物受け入れに向けた態勢を整え、「貿易赤字の格差に対処する」との約束を取り付けた。会談で大統領は、2022年1~9月までの貿易総額が291億ドルと「最大の貿易相手国である中国への輸出品の市場アクセス拡大により、両国間でよりバランスの取れた貿易を促進することの重要性」に触れたことを明かした。一方で、深セン証券取引所と比証券取引所の間で覚書が更新され、資本市場の協力分野も拡大させるという。

 会談後に大統領は「中国がフィリピン産の果物を輸入するための規則・規制の確定過程にあり、非常に喜ばしい」とし「もうすぐフィリピンから様々な果物や高品質の農産物が輸出され、貿易の均等化が図れる」とも語った。

 マルコス大統領によると、習主席とは政府機能のデジタル化や国全体の接続性といった「ソフトインフラ」の向上、気候変動、再生可能エネルギー、人的交流、中国へのマンゴスチンの輸出に加え、ドリアンの輸出に関する合意を指す「ドリアン・プロトコル」を含む農業協力も話し合われた。今回、比農務省と中国の税関は、生鮮ドリアンの輸出に関する植物検疫要件の議定書に合意した。

 ▽観光部門での協力も

 さらに、比中の観光省は「観光協力に関する実施計画」に署名。フラスコ観光相は「この実施計画によって、フィリピン国内のあらゆる観光部門に大規模な雇用機会と投資がもたらされる。両国政府は、観光客の増加、主要都市や新興都市への直行便の再開と増便、共同プロモーション活動、観光インフラへの投資誘致などで協力を図るもの」と説明した。

 また、エネルギー協力では、石油やガスの共同探査に加え、風力や太陽光といった再生可能エネルギー、そして原子力開発の可能性も話し合われたもようだ。

 マルコス大統領は、中国の李克強首相と中華人民共和国全国代表大会の李璋修議長とも会談を行い、「以前カンボジアで李首相と会った際に始めた比中の関係再強化の議論を続けた」と振り返った。(岡田薫)

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