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1月15日のまにら新聞から

親中知事が比米合同演習に反対 「中国が投資引き上げる恐れ」

[ 1190字|2022.1.15|政治 (politics) ]

カガヤン州知事が同州で計画されている実弾を使用した比米合同軍事演習に反対の声上げる

比米合同軍事演習「バリカタン」で上陸訓練を行うフィリピン国軍兵士=2019年4月11日、サンバレス州サンアントニオ(EPA=時事)

 親中派を公言するカガヤン州のマニュエル・マンバ知事やカガヤンバレー地域の評議会が、同州で計画されている実弾を使用した比米合同軍事演習に対し「中国の対比投資が阻害される」として反対の声を上げている。13日の英字紙インクワイアラー電子版が報じた。

 実弾を用いた合同演習は戦闘への準備を示すことを意図しており、その一部は今年4月に実施予定の最大の比米合同演習である「バリカタン」にも組み込まれている。

 中国に対する示威行為にもなりかねないとして、カガヤン州のマンバ知事は懸念を表明。インクワイアラーに対し「演習は実弾だ。全ての火器を試そうとしている。これが近隣諸国、特に中国との関係にどう影響するだろうか。われわれは現在、中国との関係を取り持つことに努力している」と指摘した。

 また、「比米両軍がなぜこのタイミングでカガヤン州において実弾訓練を行うと思うか」との質問に、マンバ知事は「台湾が火薬庫だからだ」と述べ、台湾有事への牽制(けんせい)に合同演習が利用されているとの見方を示した。

 演習はルソン地方カガヤン州クラベリア町で実施予定。同町はルソン島の北岸に位置し、台湾の南370キロメートルに位置する。

 カガヤン州の麻薬対策評議会、法と秩序評議会、反乱防止タスクフォースは昨年12月7日付で、同州での実弾訓練に反対する合同決議を採択。反対の声明は同州に留まらず、昨年12月22日にはカガヤンバレー地域レベルの反乱防止タスクフォースと法と秩序委員会が反対決議を採択。決議の旗振り役はマンバ知事だった。

 両決議は「合同軍事演習は国防を目的としている」と認めつつ「国によっては挑発的行動と受け取られかねない」と懸念を表明。さらに訓練は「『近隣諸国』との平和的な関係に根ざした経済の青写真を実現困難にする」可能性があり、訓練によって「東南アジア地域における地政学的プレイヤー」の間で紛争がエスカレートした場合、「市民の生活と財産が脅かされる恐れがある」と指摘している。

▽中国マネーと領土問題

 マンバ知事によると、中国人投資家はカガヤンバレー地域の食料製造業や農業・養殖業など幅広い分野への投資に関心を示しており、また沿岸部でのカジノ施設経営でも知られる。さらに、中国人投資家は国際空港や100億ペソ規模のカガヤン州アパリ町港湾プロジェクトへなど、インフラ部門への出資も行ってきた。

 2019年には中国企業がアパリ町フーガ島に「スマートシティ」を建設する事業提案を行っているが、領土問題の懸念から批判が殺到、計画は頓挫。領土問題が海外投資と切り離せないことを示す一例だ。

 5月の統一選に再選出馬しているマンバ知事は「私は親中派だ」と断言。「米国を相手に私は何ができるだろうか。われわれに関心を持ち、投資をするのは中国だ」と述べている。(竹下友章)

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