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8月28日のまにら新聞から

同盟維持も比に残る不信 「米国は守ってくれない」

[ 1458字|2021.8.28|政治 ]

比米相互防衛条約締結から30日で70年。歴史ある同盟はVFA破棄問題で揺らぐ(時事)

オースティン米国防長官(左端)と会談し、米軍地位協定(VFA)維持を決めたドゥテルテ大統領(左から2人目)=7月29日、マニラの大統領宮殿(大統領府提供・時事)

 【マニラ時事】フィリピンが米国と相互防衛条約(安全保障条約)を結んでから30日で70年となる。歴史ある両国の同盟は、昨年持ち上がった「米軍地位協定(VFA)の破棄」で大きく揺らいだ。協定を「人質」に取られた米国は、金銭や兵器の供与を重ねてフィリピンの翻意に成功。同盟の崩壊を回避したが、米国はいざというとき守ってくれないという不信感は残っている。

 ◇米は二枚舌

 VFA破棄はドゥテルテ大統領が2020年2月に決め、米に通知した。自身に近いデラロサ上院議員が米入国のビザ発給を拒否されたことが引き金となったが、平和・暴力・テロ研究所のロメル・バンラオイ会長は「米への不信感が根底にある」と分析する。

 「米国だけが中国の進出を止められたのにしなかった。二枚舌だ。だから米国は嫌いだ」。ドゥテルテ大統領は17年5月、米を非難した。「進出」とは、中国が12年に南シナ海スカボロー礁を実効支配したことを指す。

 非難は「期待外れ」から生じた。というのもVFAは、中国による1995年のミスチーフ礁占拠がきっかけで98年に締結された経緯がある。占拠は米軍が92年にフィリピンから全面撤退した後に起きており、フィリピンはVFAに対中抑止を期待し、米軍を再駐留させた。

 米国は阻止しなかっただけでなく、中国を相手取った南シナ海の仲裁裁判へ駆り立て、比中関係を悪化させた──。バンラオイ会長は、そういう解釈がフィリピンにあると明かした上で、「比米同盟が事態を悪くさせるなら中国と仲良くした方がいい」との考えが、ドゥテルテ大統領を中国に接近させたとみる。

 ◇露骨に要求

 親中派で有言実行のドゥテルテ大統領は、VFA破棄のカードを見せたことで、米との交渉を優位に進めた。破棄を「凍結」しつつ、「最低2000万回分の(新型コロナウイルス)ワクチンを送らなければ、米軍は出て行け」「VFAを維持したいのなら、対価を支払うべきだ」と発言。露骨に見返りを要求した。

 米国は昨年9月と10月、景気刺激や教育、貧困削減の名目で5年間に計435億ペソ(約950億円)を供与すると発表。11月には、対テロ名目で精密誘導兵器や対戦車ミサイル、高度無人航空機が譲渡された。新型コロナ対策でも今年7月中旬までに、14億ペソ(約30億円)の資金と300万回分余のワクチンを供与した。

 多くの「対価」を得たドゥテルテ大統領は7月、VFA破棄を撤回した。「外務省や国防省がVFA維持を強く求める中、大統領は早くからこの問題を『てこ』に使うと決めていた」。VFA維持に関わった関係者は、時事通信の取材にそう明かして続けた。「大統領は今も米国に懐疑的だ」。

 VFA 正式名称は「訪問米軍に関する地位協定」で、フィリピンに駐留する米軍の法的地位を規定。両国の同盟を機能させる重要な取り決めだが、殺人や性犯罪の容疑者となった米兵の拘束を阻まれたため、フィリピンには根強い不満がある。フィリピンは2020年2月に協定の破棄を通知後、6月から破棄を「凍結」し、21年7月に撤回した。

 南シナ海の仲裁裁判 中国が2012年に南シナ海のスカボロー礁を実効支配したことを受け、フィリピンは13年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴した。16年に出た判決は、中国が主張する境界線「九段線」の効力を全面否定した。提訴時のアキノ大統領は中国と疎遠だったが、16年に就任したドゥテルテ大統領は判決を事実上棚上げし、親中派と指摘される。

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