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4月14日のまにら新聞から

「警報はテレビで」「6割が自宅避難」。SWSと米NGOが合同世論調査、台風上陸前から被災後までを分析

[ 2322字|2014.4.14|気象・災害|ビサヤ地方台風災害 ]
タイヤで遊ぶ被災地の子供達=2月7日、ビサヤ地方サマール州マラブット町で写す

 民間調査機関ソーシャル・ウエザー・ステーション(SWS)と米国の非政府組織(NGO)のアジア基金(本部・サンフランシスコ)はこのほど、フィリピンに大きな爪痕を残した台風ヨランダ(30号)の影響を評価するために実施された合同世論調査の結果を公表した。調査は台風上陸直前の「避難呼び掛け」の段階から「被災後」までを総括的に分析した内容になっており、今後の防災対策や被災者への有効な支援を考える上で重要な資料になりそうだ。

 調査はフィリピン全国から18歳以上の男女1550人を対象にして昨年12月11日〜16日の間に行い、被災者に限らず、非被災者にも聞き取り調査を実施している。

 ▽半数以上が自宅避難

 台風警報をどうやって知ったかとの質問に対しては、全体の92%が「テレビで」と答えている。次いで「ラジオで」が48%だった。また、「親戚、知人などから」と答えたのは全体では19%だったが、被災者が多かったビサヤ地方では30%と、比較的高かった。

 台風直撃の何日前に警報が出ていることを知ったかとの質問には、全体の45%が「1〜2日前」と回答した。あらかじめ直撃することが予測されていたビサヤ地方では「3〜4日前」が39%と最も高く、次いで「7日以上前から」が23%だった。ビサヤ地方では警報が早い段階から発令され、住民も台風の襲来を事前によく知っていたことがうかがえる。

 ビサヤ地方限定で台風直撃前に避難した場所について質問すると、「自宅」との回答が58%と半数以上を占め、「避難所」を利用したのは12%にとどまった。理由は「自宅がより安全だと思ったから」(36%)、「台風がそこまで強いと思わなかった」(25%)、「避難所へのアクセスが不便、安全性に不安がある」(13%)などが目立った。台風ヨランダの犠牲者は、自宅にいて被害に遭った者が多い。今回の統計結果で、被害が拡大した理由の一端をうかがい知ることができる。

 ▽4割が生計手段喪失

 被災状況に関する統計では、ビサヤ地方の38%が「台風で家族の一員に甚大な被害が出た」と回答している。特に被害が激しかった東ビサヤ地域では同様の回答が74%に上った。

 被害を種類別にみると、「生計手段の喪失」と答えた者が比全体で37%(ビサヤ地方34%)と最も高く、次いで「病気」が16%(同22%)、「けが」が7%(同12%)だった。

 調査では、被災地のビサヤ地方に絞って、「被災後、何日間収入がなかったか」との質問も行っている。同地方では平均24日間収入がない日が続き、1世帯当たり計4千ペソ分の損失があった。

 東ビサヤ地域ではさらに被害が大きく、平均32日間収入がなく、1世帯当たり計7400ペソ分の損失だった。被災1カ月後の12月ごろは、支援が集中した東ビサヤ地域では46%が「政府の支援」、38%が「国際支援団体や個人からの支援」で生活費を賄っていた。

 一方で、支援が少なかった中部ビサヤ地域(セブ、東ネグロス州など)では、43%が「家族の貯蓄」から、36%が「国内の親戚からの仕送り」で生活費を賄っていた。しかし、国内の支援団体は同地域でも支援活動を展開しており、同地域被災者の43%が生活を頼っていた。

 ▽「助けはなかった」

 「病気を患った際、誰が助けてくれたか」との質問に対しては、ビサヤ地方の被災者のうち、「地元の医師」と回答したのがわずかに7%で、「海外から派遣された医師」も6%だった。一方で、50%が「誰も助けてくれなかった」と答えている。被災者の回答は「けがをした際に誰が助けてくれたか」との質問でもほぼ同様で、55%が「誰も助けてくれなかった」と回答するなど、これまであまり知られていない、一部の被災者の「孤立した状況」があったことが浮き彫りになった。「地元の医師」、「海外から派遣された医師」はいずれも3%のみだった。被災後1カ月目までは医療支援が大きく不足していたことが見て取れる。

 「精神的ショックやトラウマを受けた際に誰が助けてくれたか」との回答に至っては「誰も助けてくれなかった」が72%に上った。しかし、特に被害が大きかった東ビサヤ地域では、23%が「他人に救われた」と回答しており、近隣住民同士で助け合う姿勢がみられた。

 時間がたつにつれて、被災地では精神的苦痛や避難所での孤立化など、精神面の不安定化が危惧されている。今回の調査は「心のケア」を意識した被災者支援が今後は必要となってくることを教えている。

 ▽多くが支援に満足

 調査はまた、支援に対する満足度も検証している。海外からの支援については、被災者の89%、非被災者の87%が「満足」と回答している。さらに民間支援団体の支援(被災者81%、非被災者84%)、地方自治体の支援(被災者79%、非被災者74%)と続いた。政府の支援は最も「満足」と答えた割合が低かったが、それでも被災者77%、非被災者74%と半数を超えた。

 被災後、最も早く支援を開始したのは地方自治体で、ビサヤ地方の被災者の40%が地方自治体からいち早く支援を受けたと回答した。

 ▽被災地復興に希望

 苦しい立場に立たされても希望を失わず、未来を前向きに捉える姿勢が国民の多くにみられる。今回の調査でも、比全体で、被災者の71%、非被災者の68%が「被災地は必ず復興する」と回答した。復興にかかる時間については、被災者の46%、非被災者の35%が「1〜2年」と回答、「3〜4年」との回答は被災者28%、非被災者31%で2番目に多かった。(加藤昌平)

気象・災害