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「仲間と会えて幸せ」 一部候補者対象の対面式始まる EPA第16期日本語研修

[ 2278字|2024.1.25|経済 (economy) ]

日比経済連携協定に基づく比人看護師・介護福祉士候補者第16期の一部候補者を対象とした対面式日本語研修始まる

日比経済連携協定(JPEPA)に基づく、比人看護師・介護福祉士候補者の第16期への対面式日本語研修の様子=22日午前、首都圏マニラ市サンパロック地区で岡田薫撮影

 日比経済連携協定(JPEPA)に基づく、フィリピン人看護師・介護福祉士候補者の第16期(昨年11月開始)の一部候補者を対象とした対面式日本語研修が始まった。実施主体は国際交流基金マニラ日本文化センター(JFM)で、参加候補者は候補者全228人中の56人(男性13人、女性43人)。職種別では看護師5人、介護福祉士51人となる。一部対面授業は第15期後半から実施されていたが、新型コロナ以降、日本人講師8人の渡比が初めて実現し、比人講師3人と組んで対面授業を牽引していく。

 対面授業が実施される首都圏マニラ市サンパロックの日本語センター財団(NCF)では22日、午前8時から教室内のルール説明や各自の自己紹介を織り込んだオリエンテーションで幕を開けた。全国から集まった候補者は20日から徒歩2分の寮で、共同生活を開始。「にんじゃ」「さむらい」「じゅうどう」「からて」と名付けられた16人以下の四つの教室で学ぶことになる。

 この日から1コマ50分、一日7コマの授業も始まり、3コマ目には日本国大使館の官野千尋一等書記官が、各クラスを視察し激励して回った。「~たいです」を使ったある教室の文章練習では、「私は成功した介護士になりたいです」との候補者の文が「私はいい介護士になりたいです」と、より自然な文に直されていた。また「サッポロ生が飲みたいです」という文章を作り、講師を笑わせる候補者も見られた。

 休憩時間に廊下で佇んでいたブラカン州出身のジョペット・タマラさん(32)は、大手ピザチェーンのピザハットでの生地作りの前職を辞し、介護の道に転職した。妻と小学1年生、1歳の子どもから離れての暮らし、日本語の勉強も初めてのこと。授業が遠隔式から対面式に移ったことは「同期の仲間とも会えて、先生と直に顔を合わせてコミュニケーションが図れるため、とても幸せ」。寮になって「勉強に集中するための十分な時間がもてる」と利点を挙げた。

 ▽日本は「戦争がない国」

 コルディリエラ行政区ベンゲット州出身のアイリーン・プカイさん(36)は、移住労働者省のフェイスブックでEPAを知り、同省のページで募集を詳しく読み応募した。EPAへの応募以前は台湾の工場で働いていたブカイさんにとって、介護職は初めてとなる。日本の印象として、「安全で人々は思いやりがある。戦争がなく、美しい国」と形容した。山あいに住んでいたため、ブカイさんは寒さにも強いという。

 高校の教員である夫と2人の子どもの元を離れての日本行きになるが、起こり得る問題への対応を事前に家族と話し合ってきた。夫の母親が一緒に住んで子どもの面倒をみてくれることになっているという。この先、日本で介護福祉士の国家試験に合格した暁には、「一家で日本に移住するという夢に夫は賛成だ」と語った。

 また対面式授業について、「クラスメートや先生とも会話ができ、対面授業の方がより合っている」とし「オンラインでの勉強時は、家事や子どもの世話など気が散ることも多かった」と振り返った。現在は寮での共同生活だが、「静かで、勉強により集中できる環境だ」と言う。神奈川に赴任する予定のブカイさん。「日本に行ったら、北海道の魚介類や甲府でブドウを食べてみたい」

 ▽EPAに利点

 ルソン地方パンガシナン州から来たジェイソン・ニカルさん(34)は、元々介護士として米国のカリフォルニアで4年間働いてきた。比に帰国し、次の行き先を探していたところ、EPAについて発信している日本在住のブロガーを見つけ、移住労働者省のウェブサイトを通じて応募した。特定技能や技能実習制度と比べて、より日本語が身に付けられるEPAに利点や魅力を感じてのことだった。

 ニカルさんは首都圏の大手建築会社で安全管理者として8年間働いていた。そこでは3千~4千人の職員を管理していたという。2018年からはキューバ・グアンタナモの米軍基地でも安全管理者を6カ月間務め、そこからカリフォルニアに移り、前職に就いたという。

 ニカルさんには現在、11歳になる娘と9歳の息子がいる。日本行きを決めた理由について、「安全な国で働きたいという思いはある」と強調。また「単にお金を稼ぐためだけに行くのではない。将来子どもに日本で教育を受けさせることも考えている」そうで、「家族の将来も私が国家試験に合格するかどうかだ」と笑った。赴任先は東京だが、「広島の原爆跡地を訪れ、歴史を学びたい。休日には魚釣りができたら」と仕事以外の楽しみにも触れた。

 ▽候補者数上限に満たず

 EPA事業における看護・介護人材を担当する官野一等書記官は、コロナ発症に伴う4年前の防疫強化措置が敷かれた日に比へ赴任した。官野書記官によると、コロナ禍を経た事業応募の候補者数は、上限に満たない状況が続く。

 今後の対応として、「看護師や介護福祉士として日本で働く方法があることをしっかりと広報し、興味を持ってくれた人は行けるようにすること。また、EPA事業においては訪日前・訪日後研修をしっかり行った上で就労できることをアピールしていく重要さ」を強調した。

 また、EPA介護への応募要件について、「看護学校を出ているか、TESDA(技術教育技能開発庁)の介護コースであるNC2を修了しているかどうかが条件になっている」。一方で「最近は他の国も介護人材の需要が増えてきているという動きがあるので、そういうところは注意して見ていきたい」とも語った。(岡田薫)

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