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12月16日のまにら新聞から

「比を投資しやすい国に」 外資誘致のため改憲を検討 マルコス大統領

[ 1379字|2023.12.16|経済 (economy) ]

外資制限が盛り込まれている現行憲法について大統領「改正の検討をしている」

 マルコス大統領は15日、具体的な外資制限が盛り込まれている現行憲法について、政府が改正に向けて検討をしていることを明らかにした。大統領は「私にとって最重要の関心は、この国を投資しやすい国にすることだ」と強調。「改憲だけでなく、投資家誘致のために改革すべきことは何かを検討している」とし、法改正も含めた外資規制に関する制度改革を推し進める姿勢を打ち出した。

 下院では、3月に改憲に向けた動きが進んだものの上院が応じず棚上げとなっていた。今回、大統領が声を上げたことで、上院も巻き込んだ改憲の議論が本格化しそうだ。

 現行憲法は1986年に故マルコス元大統領を政変(エドサ革命)で打倒したコリー・アキノ元大統領政権下で87年に成立。それ以来、手が付けられていない現行憲法が、故マルコス大統領の長男である現大統領の政権下で改定されれば、「ポスト・エドサ革命期」を画する象徴的な意味も帯びそうだ。

 検討の内容について大統領は、「憲法の経済条項とそれに由来する法令が、われわれが呼び込もうとしている潜在的な投資をどれだけ妨げているのか、その『機会費用』について検討している」と説明した。

 これに先立ち、ロムアルデス下院議長は12日、「15日からの議会のクリスマス休暇中に改憲に向けた検討を行う」と表明。「経済条項の改正が目標だが、そこに至るための改憲手続きも定めなければならない」と述べていた。

 下院は今年3月、改憲方法の一つである憲法会議の召集および上下両院に同会議の構成や実施細則に関する法制定を求める両院決議第6号を採択。さらに、同会議の委員選出選挙を10月30日に行う決議を通したが、上院はそれに応じなかった。

 比憲法17条によると憲法改正会議は、上下両院議員の4分の3の賛成、有権者の12%以上による請願に並ぶ、改憲の発議のための三つの方法のうちの一つ。同条3項には全議員の3分の2の賛成投票により憲法改正会議を招集できることが規定されているが、同会議の構成などについての細則はまだ定められていない。

 ▽何が制限されているのか

 憲法12条2項は全ての天然資源を国有とし、天然資源の探査・開発・利用事業を受注できる企業の外資比率を40%未満と定める。また領海・排他的経済水域(EEZ)の海洋資源については「比国民のみが利用・享受する」との定めがあるため、アロヨ政権下で一部行われた中国やベトナムの石油公社との南シナ海海底共同探査事業は違憲判断を受けているほか、ドゥテルテ政権期に検討された200億ドル相当の天然ガスが埋蔵されていると考えられている南シナ海レクト堆の比中共同開発案も棚上げされている。

 また12条11項は、公益事業の運営企業について国内資本比率60%以上との制約を課す。昨年の公共サービス法改正により「公益事業」の定義が狭められ、従来規制されていた通信、鉄道、道路などは外資制限が撤廃されていたが、①送配電事業②上水道の配水・送水および下水事業③石油製品向けパイプライン輸送事業④港湾事業⑤車両を使った路上旅客運送事業――についてはなおこの条項の制約を受けている。

 さらに16条11項には、広告業の資本は70%以上が比人によって所有され、その役員は全員比人でなければならないとの定めがある。(竹下友章)

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