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11月18日のまにら新聞から

きょう三越オープン 東南アジア初、BGCに

[ 1721字|2022.11.18|経済 (economy) ]

BGCにMITSUKOSHI BGCがオープン。東南アジア初の三越店舗に

(上)三越ライオン像の除幕式=17日、竹下友章撮影。(下)地下1階の食料雑貨売り場=17日、竹下友章撮影

 三越伊勢丹ホールディングスはきょう、タギッグ市ボニファシオ・グローバルシティ(BGC)に野村不動産株式会社、比不動産大手フェデラルランド社と共同開発する複合施設「ザ・シーズンズレジデンス」の地下1階~地上3階に、東南アジア諸国連合(ASEAN)初の三越店舗である「MITSUKOSHI BGC」をクリスマス商戦本格化前に先行オープンした。

 同店は、フィリピン初の三越伊勢丹グループ商業施設であり、日系の百貨店・デベロッパーによる複合プロジェクトとしてもフィリピン初。さらに、海外の三越店舗のなかで初めて三越のシンボルであるライオン像が置かれた店舗でもあり、「初めてづくし」となっている。

 

 ▽デパ地下、紀伊國屋

 先行オープンのテナント開業率は55%で約60店。地下1階は日本の「デパ地下」をテーマにする。食料品店「MITSUKOSHI FRESH」では、日本産を含めた生鮮食品・食料雑貨・酒類を販売。「獺祭」「宮寒梅」など日本酒ブランドも取りそろえるほか、「東京ばな奈」や「喜久福」など、デパ地下コンセプトを反映した商品も販売する。また、英国発のクッキー専門店「ベンズクッキーズ」、チーズケーキやソフトクリームなど洋菓子を販売する「東京ミルクチーズ工場」、シンガポール発のパン販売チェーン「ブレッドトーク」などが出店する。

 2階には紀伊國屋が比書店「フーリーブックト」との提携を通じて出店。日本に本社を置く書店の出店はフィリピンで初となる。店舗のディスプレイには漫画「進撃の巨人」、写真集「YUZURU 羽生結弦写真集」、ムック「週末でつくるガンプラ凄技テクニック 」などといったコアなファンを集める書籍も並ぶ。店員によると、日本書籍の取り寄せも可能だという。近くにはフィギュアやぬいぐるみなどのアニメグッズを販売する「CO.」も出店する。

 麻の葉模様をモチーフとする店舗の外装は、2020東京五輪ロゴをデザインした東京造形大客員教授の野老朝雄氏が手掛ける。

 また、「参道」や「通り庭」などの要素を盛り込んだ内装は、百貨店や博覧会などの空間総合プロデュース・施工で日本最大手の株式会社乃村工藝社が請け負った。海外三越初のライオン像設置も含め、三越伊勢丹の本気度を伺わせる造りとなっている。

 

 ▽決め手は人口ボーナス

 三越伊勢丹はまにら新聞の取材に対し、MITSUKOSHI BGC主要ターゲット層について「外資系企業・比国内財閥系企業の従業員およびその家族、企業経営層」と説明。特に富裕層はコロナ前に銀座三越に訪れたことのある人も多く、ネームバリューが高いことが判明したことから、伊勢丹ではなく三越の暖簾(のれん)を選択した。中高所得層比率が高く、開発継続で入店・入居者の中長期的増加を見込む立地であるBGCからターゲット層の消費需要の取り込みを狙う。

 SMやアヤラモールなど比国内財閥系商業施設に対する差別化戦略としては①日本商品とおもてなし②日本の要素を取り入れた空間設計③コンドミニアムとの複合施設であることを考慮した日用消費財への特化――という3点を挙げた。

 また、他のASEAN諸国でなく、なぜ比を三越の出店先に選んだのかついては①高い経済成長率②ASEANの中でも人口ボーナス期が最長で、今後も個人消費の拡大が見込めること③フェデラルランド社という「素晴らしいビジネスパートナー」が見つかったこと――という3点を説明した。

 人口ボーナスとは、生産年齢人口の増加率が人口増加率を上回る状態。通常は労働という生産要素の増加は経済成長につながる。

 ところが比では、あふれる労働力を吸収する雇用が慢性的に不足したことから、労働力輸出(海外比人労働)を通じたブレインドレイン(頭脳流出)、高い不完全就業(偽装失業)率、都市部にインフォーマルセクターが集中する「過剰都市化」などの諸問題が発生してきた。それがノイノイ・アキノ政権以降の良好な経済パフォーマンスにより、「人口ボーナス」が比にとっても長期的な経済成長の継続を裏打ちする指標として外資から再評価されているようだ。(竹下友章)

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