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6月5日のまにら新聞から

ウイ氏が主要株式を売却へ マランパヤ天然ガス田事業

[ 1095字|2022.6.5|経済 (economy) ]

比のエネルギー事業を支えるマランパヤ天然ガス田事業の主要権益をデニス・ウイ氏がエンリケ・ラソン氏に売却することで合意した

 ルソン地方にある5カ所の火力発電所に天然ガスを供給するパラワン島沖のマランパヤ天然ガス田を操業する合弁会社の90%持株をシェブロンとシェル・フィリピン探査会社から買収したダバオの実業家デニス・ウイ氏がこのほど、この主要株式を国際貨物港運営会社や統合カジノなどを所有する有力実業家のエンリケ・ラソン氏に売却することで合意したもようだ。ラソン氏が所有するインフラ持株会社、プライム・インフラ・ホールディングスが2日に声明を発表し、「同ガス田運営会社の主要株式買収に向けた手続きを開始している」と明らかにした。売却額などは不明。3日の英字紙インクワイアラーが報じた。

 マランパヤ天然ガス田は現在、シェル・フィリピン探査会社が実質的に操業している。ウイ氏が所有するウデンナ・コーポレーションがシェブロンの権益を2020年に5億6500万ドルで、また、ウデンナの別の子会社を通じてシェル・フィリピン探査会社の権益も4億6000万ドルでそれぞれ買収したものの、運営のノウハウ自体をウデンナ側は持ち合わせておらず、正式な運営体制の移譲が問題視されていた。

 また、シェブロンが2020年11月にマランパヤ天然ガス田の権益をウデンナ・コーポレーションに売却した直後から上院のエネルギー委員会(ガチャリアン委員長)で、この権益売却交渉においてクシー・エネルギー相ら官僚たちが便宜を図った疑惑について調査を開始。22年2月には上院が同相やマルコス・エネルギー次官ら同省幹部ら12人が買収交渉で汚職に関与したとして刑事訴追することを勧告する決議を承認し、行政監察院(オンブズマン)に提出している。

 ルソン地方の発電能力の過半近くを支えている天然ガスを供給する同ガス田はこのままでは27年には枯渇するとの見方がエネルギー省から出ており、適切な再開発事業の実施が必要と言われてきた。これらの問題を解決するためにもウデンナがプライム・インフラに主要株式を売却する一方で、共同でガス田開発に取り組むとの姿勢を見せている。

 デニス・ウイ氏はドゥテルテ大統領の盟友として知られ、2016年以降のドゥテルテ政権下で主要持株会社のウデンナ・コーポレーションを通じて経営多角化を推し進め、飛ぶ鳥を落とす勢いで国内有数の複合企業へと成長させた。しかし、第3の携帯会社のディトやカジノ運営会社、ロジスティック企業などへの投資拡大路線が最近、行き詰まりを見せており、セブやクラークでのカジノ建設運営事業について、やはりエンリケ・ラソン氏のリゾート運営会社が買収を提案するなど両実業家の接近が明確になっていた。(澤田公伸)

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