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4月17日のまにら新聞から

トップに聞く 「独占契約のメーカー商品で勝負」 ハイタワーJフーズ役員の山本昌明さん

[ 2994字|2022.4.17|経済 (economy) ]

マカティ市でオープンした「OMAKASEグローセリー&デリ」の役員、大井山本商店の山本昌明代表取締役が展望を語った

(右)大井山本商店の代表取締役、山本昌明さん=9日正午ごろ、首都圏マカティ市の「OMAKASEグローセリー&デリ」で岡田薫撮影/(左)「OMAKASEグローセリー&デリ」の店内には作り立てのお弁当も並べられていた=9日午前11時ごろ、首都圏マカティ市で岡田薫撮影

 フィリピンの日系輸入卸売会社ハイタワーJフーズが今年2月4日、首都圏マカティ市で、小売・卸売両方に対応したプレミアム日本食材店、「OMAKASEグローセリー&デリ」をソフトオープンした。ハイタワーJフーズは比食品輸入卸売大手のハイタワー、三陸産の水産物や加工品を輸出する三陸コーポレーション(本社東京)、そして日本国内外のメーカーと繋がりを持つ大井山本商店(同大阪市)による合弁会社。水産物を中心に「オールジャパン」の商品を取り寄せ、輸出してきた老舗、大井山本商店の山本昌明代表取締役(47)が9日、比における日本食材の展望を語った。(聞き手は岡田薫)

―大井山本のこれまでの歩みは

 「大井山本は滋賀県草津市の近江商人だった先祖が1630年に創業し、名前を変えながらも約400年近く続いてきた会社で、私で18代目。琵琶湖の川魚をとって、籠で京都へ持っていき、味噌漬けや塩漬けに加工し、大阪の商業地で売っていた。水野忠邦が制定した『市場』に出入りしていた先祖が、天満市場を経て大阪中央市場の仲卸で海産物問屋を始めた。祖父の代には当時日本人の主食とも言われたシロナガスクジラを売っていた。父親の時代にクジラ肉が制限され、輸入のブラックタイガーを売るなど、時代に合わせて各代がビジネスの中身を変えてきた」

―海外進出は一代でなしとげたのか

 「シンガポールや香港など東南アジアと中東向けに、北海道から沖縄まで全国の食材をコンテナに入れ、大井山本が持つ船で現地に届けてきた。それではもの足りなくなって円高だった11年前にタイに会社を設立し、自信をもって輸出したいメーカーさんの日本食材を現地で広めてきた。タイでは当時約500店だった日本料理店が、現在は約3500店になっている。また、この11年で円安傾向に変わり、輸出が容易となってその波に乗った。香港やシンガポールではレストランや現地スーパーに卸し、北海道や九州の物産展をイオンさんで企画するなどしてきた。成長度が高い比を次にと考えてきた」

―OMAKASEはショールームなのか

 「Jフーズは日本食や日本の食材を比に行き渡らせることが最終的な目標だ。OMAKASEはあくまでも旗艦店で、SMスーパーやS&Rさんなど、日本でのイオンさんのような、比人に必要とされる日本食材を地元スーパーに卸すことも使命の一つに据えている。ハイタワーはファストフードチェーンや現地スーパー、コンビニなど比全土に配達網・卸機能を持つ。いうなればJフーズは食材をそこに乗せるだけ」

 「カルティマール市場をはじめ比に日本食材店は多く、これまで困っている人たちの支えとなってきた。一方でJフーズは、比食品医薬品局(FDA)の商品登録ならびに輸入許可を得ているメーカーものに特化し、日本のコンビニが売るような「ナショナルブランド」はほとんど扱わない。他店にあるものをここで売る方法ではなく、大井山本がメーカーと独占的に比で広める契約を結んだ会社の商品になる」

 「他国での成功実績を持つ自社の強みは、メーカーの信頼があること。メーカーは製造が仕事で、それを現地で売って広めるのがわれわれプロの仕事だ。さらに通常の輸入業者は、商社機能は持っていても、レストランや小売業は難しい。ノウハウが違っているからだ。大井山本はタイで小売20店舗、レストランも5店舗ある」

―三越伊勢丹の物流も扱うのか

 「タギッグ市ボニファシオ・グローバル・シティー(BGC)に今年、三越伊勢丹さんがオープン予定だ。その三越伊勢丹しか入らない商品の物流を大井山本が担い、現地ではJフーズが三越伊勢丹の縁の下の力持ち的な存在として、輸入手伝いを行う。タイの三越伊勢丹(すでに撤退)でも、店内のシーフードコーナーを任された実績から、比の三越伊勢丹でもシーフードコーナーを担当することが決まっている。三越伊勢丹においては大阪の人気アップルパイ専門店「Anri」も比初進出してもらう。青森の宗像林檎を使用し原料はすべて日本から。これまでのアップルパイの次元とは違うものになる」

―必然的に値段も高くなるのでは

 「世界的な事情で輸送自体が大幅に遅れ、現在コンテナ代は3倍に上がっている。ただ、Jフーズは商品そのものに加え、付加価値を提供する会社だと自負している。ナショナルブランドだけで日本食の広まりは期待できない。全国の産地からより価値あるものを比に持って来たい。一風変わったこだわり食材に加え、ミシュランで星を取るような店が使うプロ仕様の調味料や食材も揃えている」

 「大井山本は北海道庁との協業による北海道食材専門店『どさんこプラザ』をタイでやっている。道庁が私をそのアンバサダーに任命したこともあり、北海道から『白い恋人』などを正規で輸入し、市場を開拓していきたい。その他、三陸地方に加え、日本の津々浦々からいろいろな食材を県単位で持って来たい。単なる運び屋ではなく、正規通関で安定供給をモットーに、比にいながら日本の四季が感じられる『本物』の食体験を、いずれ現地スーパーなどにも広めていくつもりだ」

―比の日本食も大きく変わっていくと思うか

 「比は『危ない』『安い』といったイメージが根強く、進出に二の足を踏んでいる信用ある日本企業の受け皿になれたら。円安だから日本に行き易いが、査証の問題がある。日本に行きたくても行けない人たちに『日本そのままの味をフィリピンで』がJフーズのコンセプト」

 「運び屋さんはコロナ禍で停止を余儀なくされたが、Jフーズはコロナ禍でも物流が止まらない。卸売に加え、個人宅配やセブやダバオといった地方にも卸してきた。これは大きな違い。また、ハイタワー社は去年7月の新型コロナ下に、パラニャーケ市内に1万5000パレットもの大型業務用倉庫を新設している。コロナ禍でシャッターが降りてしまったままの場所にも日本料理店を誘致するなど、比の盛り上げに一役買いたい」

―ソフトパワーとしての日本食の現状は

 「韓国のKポップ戦略に対し、日本はアニメと食。外国人観光客が日本で一番楽しみなのは食べ物。コンビニでおにぎりを食べて『100円でこれ!』と驚く。システムを移行しただけの比のコンビニとは質が違う。当時の安倍政権が国家事業として食材1兆円を輸出すると言った時から、私は農林水産省の12人いる有識者会議メンバーの1人として関わってきた。すでに1兆円は超えているが『カントリーリスク』が元々高い比に予算は付いていなかった。そこに予算を持ってきたいと思っている」

 「三越伊勢丹が進出することはカントリーリスクを引き下げてくれる。日本の百貨店が進出するということはそういうこと。ただ、百貨店が来ても受け手として輸出入を担う会社がなければ、ものは運べない。そこを大井山本やJフーズが担っていきたい」

 MASAAKI・YAMAMOTO 1974年5月大阪府吹田市に生まれる。2006年に大井山本の社長就任。タイで09年に「タイ大井山本」を設立、シンガポールやマレーシア、香港、中東などで、現地における日本食材の販売推進事業をけん引。来年はベトナム進出も。

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