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1月12日のまにら新聞から

「和平プロセスに定期的レビューを」 BARMMに新たな動き

[ 1453字|2024.1.12|社会 (society) ]

スイスに本部を置く財団「プリンシプルズ・フォー・ピース」がバンサモロ包括的和平合意の確実な実施を誓う式典を開催

バンサモロ和平プロセス誓約式の模様。中央がガルベス平和和解統一担当大統領顧問、その左がBTAイクバル教育大臣、右がブラウナー国軍参謀総長=11日、首都圏タギッグ市で竹下友章撮影

 スイスに本部を置く財団「プリンシプルズ・フォー・ピース(P4P)」は11日、比国内の3団体と共同で、首都圏マカティ市でガルベス平和和解統一担当大統領顧問やモロ・イスラム解放戦線(MILF)幹部でバンサモロ暫定統治機構(BTA)の教育大臣を務めるモハクヘル・イクバル氏ら政府・BTAの要人を招き、2014年のバンサモロ包括的和平合意の確実な実施を誓う式典を開催した。

 式典にはブラウナー参謀総長をはじめとした国軍要人、BTA議員、市民社会グループ代表、日本やマレーシアなどミンダナオ和平に貢献してきた各国の大使館職員、マカティビジネスクラブやジョリビーグループなどのビジネス団体・大手企業代表、先住民団体、女性団体、青年団体の代表など約200名が招待された。

 2019年に発足したP4P財団は、世界中の和平プロセスを分析し和平実現のための原則を抽出、それを世界中の和平の取り組みに適用して定期評価し、課題と改善点をフィードバックすることで和平実現をサポートする。P4P財団はこの取り組みを「国連人権理事会による人権問題に関する『普遍的・定期的レビュー』の和平プロセス版」と説明している。

 パレスチナ自治区ガザ出身であるP4P財団ヒバ・カサス執行役員は「多種多様な協議、和平合意に関する正常化付属文書の実施の遅れ、土地の権利争い、氏族間紛争はバンサモロイスラム自治地域(BARMM)にとって差し迫った懸念となっている」と指摘。「何もしないことのコストは余りに高くつく。関係者は、より組織化されたコミュニケーションと貢献を、和平を効率的に進めるために必要としている」と訴えた。

 P4P理事で、アロヨ政権、ノイノイ政権で和平担当大統領顧問を務めたテレシア・デレス氏は、あいさつで「世界中で武力衝突が発生している中、平和の重要性を強調してし過ぎることはない。暴力的過激派と戦争の闇に対する灯台となった包括的和平合意締結から10年を迎える今年、和平プロセスの継続性を強固なものにしたい」と語った。

 ガルベス大統領顧問はあいさつで、「昨年7月にダバオで始まったP4Pの取り組みは、バンサモロ和平合意実施における包摂的な協力を確保するものであり、よろこばしい展開だ」と歓迎。

 戦闘員の退役プロセスについては「昨年第3フェーズを終え、400人以上のモロ・イスラム解放戦線(MILF)、モロ民族解放戦線(MNLF)の元メンバーが警察官になった」とし、また「スルー州などにあるイスラム武装組織の基地は、ライフルを農具に持ち替え、共同体に変貌しつつある」と説明した。

 さらに、BARMMで比国軍、国家警察が、BTAの中心となっているMILFと合同で治安チームを昨年設立したと報告。しかし、2025年の選挙には「またやらないといけないことがたくさんある」と認めた。

 また、BARMMへの2024年予算に1000億ペソが割り当てられたことを祝福しながら、「この予算を経済発展と貧困改善につなげられるかが課題だ」と指摘した。

 ブラウナー参謀総長は記者団に対し、「バンサモロ和平は誰よりも軍人が望んでいること。私はMILFの兄弟たちに対し、国軍も和平に真剣だということを示すために来た」と語った。

 BARMMを巡っては、自治区発足のために2022年に予定されていた選挙がコロナ禍で3年先送りになった上、2025年の選挙に向けた戦闘員の退役・武装解除のプロセスにも遅れが報告されていた。(竹下友章)

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