ラグナ州カビニ町のカリラヤ日本人戦没者慰霊園で15日、日本の終戦記念日に合わせた慰霊祭が行われた。今年の式典には、遠藤和也駐フィリピン日本国大使など在比大使館関係者のほか、在留邦人団体、日本人・日系人団体、日本遺族会、フィリピン政府などから、約250人が参列した。
慰霊祭は、マニラ日本人会合唱同好会による日比の国歌斉唱と、出席者一同による黙とうで始まった。その後、代表者4人が追悼メッセージを読み上げた。
戦後80周年を迎える今年の式典では、石破茂首相のメッセージを遠藤大使が代読。「日比両国が戦後80年間に築いた平和と繁栄は、尊い犠牲と努力の上にある」と述べ、キリノ元大統領による恩赦などフィリピンの寛容な精神に感謝を表した。
マルコス大統領のメッセージは、比外務省アジア太平洋局のエバンジェリン・ドゥクロク氏が代読した。最近では比大統領の追悼の辞は在比大使館職員が担当することが多く、比人による英語での代読はまれ。「比国民は日本国民と共に、戦争で命を落とした罪のない人々と、自由のために戦った人々に、深く哀悼の意を表する」と述べたうえで、両国が築いた今日の戦略的パートナーシップを称えた。
日本遺族会の盛川英治事務局長は、ウクライナ侵攻など、世界各地で起きている戦争に触れたうえで、「このような時だからこそ戦没者遺族が語ることのできる記憶を次世代へ伝承していかなければならない」と述べた。マニラ日本人会の岡本和典会長は、「私たちがみる南国の美しい空と同じ空を、山を、海を、花を見ながら、無念の死を遂げられた」と、戦没者らの最期に思いをはせ、世界平和実現への努力を誓った。
献花では、参列者が献花台の前に長く列を作り、白い花を1輪ずつ積み重ねた。額に花をかざして祈る者。小さな手を合わせる子供。それぞれの祈りを、合唱同好会の歌声がそっと包んでいた。
閉会の辞では遠藤大使が「祖国の地を踏むことができなかった同胞の方々の無念さを想わずにはいられない」と述べたうえで、「犠牲となった数多くの比人の方々、日系人の方々、そのご家族の苦悩と計り知れない悲しみを、我々日本人は決して忘れてはならない」と、戦没者と犠牲者への追悼の意を表した。
▽戦後80年の現在
今回の慰霊祭には、例年と比べて多くの比人が参列した。式典終了後に報道関係者らのインタビューに応じた遠藤大使は、すべての参列者に対する感謝の気持ちを述べたうえで、式典に出席した比人への感謝を強調した。
戦没者の遺骨収集に関する事業進捗についてのまにら新聞の質問に対しては、「今年も様々なかたちで厚生労働省の関係者が来比し、遺骨収集のための調査などを行っている」と説明。また、終戦から80年の年月が経ち、課題はあるものの、国として重点的に対応を進める姿勢を改めて表明した。
また、遠藤大使は、比に興味を持つ若い世代への言葉として、多くの分野で協力が進む日比関係の現状を踏まえ、「そこに至る過程で、日比双方の先人たちの努力があり、今の状態に至っていることを、我々の世代や、より若い世代の方々にも、ぜひ時折思い返していただけるとありがたい」と語った。(宇井日菜)