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役に立つ経済学 大嶋正治BOIアドバイザー

第15回 ・ 第16回 中間層が支えるラーメン戦争 大嶋正治BOIアドバイザー

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 昨年後半から日本の有名ラーメン・チェーン店、老舗とんかつ屋、大手焼肉店の出店が相次いでおり、そのうち数店が好調に業績を伸ばしているようで、2号店、3号店と多店舗展開の様相を呈しています。今回はこの日本食ブームに焦点を当て経済学的に考察してみたいと思います。

 まず経営形態ですが、その殆どがフランチャイズ契約です。フィリピン人オーナーが日本を訪れた際や、米国やシンガポール等の海外店舗に立ち寄った際に、その料理に魅せられ日本の本社を口説いてフランチャイズ契約にこぎ着けたケースが大半のようです。従って製造業による工場進出のように、工場建設や最新機械の導入といった多額の投資資金が流入するわけではありませんので、日本からの投資誘致がミッションの筆者の立場からするとやや残念なのですが、個人的には日本の味が当地で堪能できるメリットがありますので、今後とも増加することを期待して止みません。また、フィリピン人オーナーは本業が飲食業で提供商品の多様化を目指す例もあれば、本業は製造業であるが多角化の一環で飲食業に手を染めるケースもあるようです。一般的に当地の大手財閥は華僑出身者が多く、彼等の価値観では事業に成功した者は飲食業も手掛け広く社会に貢献、還元するという意識が強いようです。従って日本のように飲食業を「水商売」と見下す風習はありません。

 次に貿易への貢献ですが、当地では肉類、コメ類は輸入規制品目となっており、現状日本からの牛肉、豚肉やコメの輸入は困難ですので、日本からの輸出増加にはつながっていないのですが、今後の消費量の伸びや日本の関係機関の努力により日本産の良質食材が安価な値段で輸入される日が来ることを祈っています。

 それでは、このラーメン、とんかつ、焼肉ブームは誰が支えているのでしょうか? 我々2万人弱の日本人在留者と一部のフィリピン人富豪たちでしょうか? いいえ、上の表のA〜Cの中間層約400万世帯の人たちがこのブームの真の担い手なのです。

 しかし、社会階層全体からするとわずか2割の人たちがラーメンブームを支えているのです。日本では1杯500円〜千円の庶民の食べ物であるラーメンが当地では8割以上の世帯の人たちには手の届かない高級料理なのです。

 したがって今後ラーメンに限らず国内市場をターゲットとする日本からの小売業の進出を検討する際には「貧富の格差が大きい」当地の消費市場の特性を理解した上で人口9600万人の市場ではなく、当該商品を購入できる消費者層をよく分析した上で1千万人を対象とするのか2千万人なのか絞り込んだ販売戦略の立案が肝要と思われます。

この貧富の格差は誰が作り出し、誰が温存しようとしているのか? 改革を阻止しようとしている反対勢力はいずこにいるのか? 我々外国人も良く考えてみないといけません。今やタイやインドネシアではこの中間層の数が増加し、その消費が経済成長を下支えしています。しかるに翻ってフィリピンではアキノ政権3年が経過しても失業率は改善せず、貧富の格差も改善していません。海外就労者(OFW)の送金に依存した内需主導の経済成長には限界があります。この余裕がある時期に長期的な展望に立った構造改革、規制緩和に着手する必要があります。

ベトナムの追い上げに気を取られるのではなく、インドネシアやタイをターゲットとして追い上げるための成長戦略を実行に移す最後のチャンスです。残された3年間で貧国削減、雇用増に即効性のある農業や製造業におけるより一層の振興策が打ち出されることを願ってやみません。(続く)

(2013.8.5)

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