Logo

06 日 マニラ

29°C24°C
両替レート
¥10,000=P3,815
$100=P5,680

06 日 マニラ

29°C24°C
両替レート
¥10,000=P3,815
$100=P5,680

井戸を共に囲み喜んだ日 60年の歩みつないだ2人(後)

2025/9/6 社会
飲料水インフラ整備で、通水を確認する鮎澤さんと子供たち=パナイ島、鮎澤優さん提供

元ODA事業従事者の鮎澤優さんに、1980年代のボランティア経験をインタビュー。日比の経済協力が進展し、両国の距離が近づきつつあった時代の、鮎澤さんの温かな経験

国際協力機構(JICA)のフィリピン支援事業を支えたのは、1700人の青年海外協力隊だけではない。特定の企業からJICAの政府開発援助(ODA)に携わった人々も、最前線で日比の歩み寄りに貢献してきた。ODA事業経験者の鮎澤優さん(64)=群馬県出身=は、日比の経済協力強化が進んだ時代に、地方においてフィリピンの発展を支えた1人だ。

 鮎澤さんは、1989年にコンサル会社の社員として、フィリピンでのODA事業に従事した。80年代は、日比間の経済協力がより活発化した時代だ。

 1980年には、1974年発効の日比友好通商航海条約が改訂。港での船舶の扱いが最恵国待遇に変更されたほか、海運発展における相互協力の促進を目的とした規定が新設された。

 パナイ島のイロイロ市で、鮎澤さんは地方環境衛生プロジェクトやマニラの地下水調査、地方の井戸掘削工事の管理に取り組んだ。公共事業道路省(DPWH)地方水道公社(LUWA)と関わりながら、井戸掘削や学校のトイレ建設などに携わった。

 日々の活動の中で、鮎澤さんは温かく友好的な対日感情に触れた。井戸ができて、揚水試験のために水をくみ上げると、決まって近くの村人たちが集まってきた。歓声をあげる子供たち。満面の笑みで水をくむ大人たち。あふれる水でさっそく洗濯を始める人もいたという。この光景を目にするたび、鮎澤さんは胸の奥が温かくなるのを感じた。

 とりわけ、地方のへき地での経験が印象的だった。現場近くの小さな食堂で毎日食事をとる時、地域の人々が底抜けに明るい笑顔で迎えてくれた。DPWHとLUWAの職員も「非常に友好的に接してくれた」という。

 「彼らの純粋な好意は、歴史的な背景を乗り越える強い絆を感じさせた」。フィリピンでの活動は、鮎澤さんにとってかけがえのない経験となった。

 ▽変わる環境、変わらぬ本質

 過去にはエチオピアで青年海外協力隊に従事するなど、地域協力経験の豊富な鮎澤さん。フィリピンでのボランティア活動について、ボランティア参加当時と現在の違いを問うと、「自立と創造性がより重要になっていると感じる。かつては不足しているものを補う形でインフラ整備などを行ったが、現在はインターネットの普及で情報があふれている」と答えた。

 また、現地の人々が本当に必要としているもの、地域の人々が主体となって発展していくための「人づくり」への貢献が求められているという。「表層的な支援ではなく、地域の文化やニーズを深く理解する力が重要」という鮎澤さんの言葉には、自身の経験と、先人がつないだ協力活動の蓄積がつまっているようだ。

 「ゼロから共に未来を築く力。当時も今も変わらない、ボランティア活動の本質です」と鮎澤さん。戦争の深い傷跡から、温かい経験を通じて徐々に歩み寄ってつながれた日比関係。戦争の問題に限らず、両国ともに複雑な問題を抱える今の時代だが、協力の基本はいつでもシンプルだ。日比の当事者たちが友好の花を咲かせ、そして共に歩んでゆくことだろう。(宇井日菜)

おすすめ記事

井戸を共に囲み喜んだ日 60年の歩みつないだ2人(後)

2025/9/6 社会 無料
無料

邦人標的強盗の犯人逮捕 別件逮捕後に余罪判明

2025/9/6 社会 有料
有料

「ルフィ」残党を拘束 アンヘレス市で、入管

2025/9/6 社会 有料
有料

2026年の祝日・特別非労働日発表 前年同様20日 内容一部変更

2025/9/6 社会 有料
有料

日比友好70周年記念ロゴを募集 在フィリピン日本国大使館

2025/9/6 社会 有料
有料

戦争の記憶を紡いだ夜 60年の歩みつないだ2人(前)

2025/9/5 社会 無料
無料