ルソン地方北部バギオ市にある米国大使公邸で3日、山下奉文元陸軍大将の投降80周年を祝う式典が開催された。駐比日本軍(第14方面軍)を率いた山下大将が正式に降伏文書に署名したこの日が、フィリピンにおける正式な戦勝記念日に当たる。米国大使公邸のある「キャンプジョンヘイ」は戦前の米軍基地で、戦時中には日本軍に接収され司令部として使用されていた場所だ。式典にはテオドロ国防相、ブラウナー参謀総長、米国のカールソン大使、松田賢一次席公使、退役軍人らが出席した。
基調講演でテオドロ国防相は、日本軍への勝利を祝う同式典で、日本を含めた同志国と連携して、中国を中心とした新たな秩序に立ち向かう決意を示した。
同相は、米軍の一員だった曽祖父が開戦直後にこの地に捕虜として収容されたと説明した上で、「今日は単なる記念日ではなく、深く反省する日でなければない」と指摘。「戦争終結から80年経ち、第二次世界大戦のような規模の戦争には巻きこまれていない。しかし、現状に甘んじていていいのか。軍事的なもの、非軍事的なもの、自然現象、経済的な競争や紛争など、あらゆる形態の紛争を抑止する準備はできているのか」と問題を提起した。
その上で、「ブラウナー国軍参謀総長との協議で、国と呼ぶに値する国のバックボーンを築くために、修正しなければならないいくつかの欠陥を発見した」とし、「他国による領土、国民、自由、そして権利の神聖性への破壊を抑止する」ために、多国間連携を進めていることを説明した。
さらに同相は「先日、上海協力機構の会議で中国は国際秩序を表面上はより公平なものに変えたいという主張と目標を表明したが、かれらの社会は公正で自由なのか? 答えはノーだ。私たちの利益とは相反する、彼らの政策と利益を推進するための婉曲(えんきょく)表現だ」と中国を名指しして非難。
「条約上の同盟国である米国、かつての敵国である日本、オーストラリア、韓国、最近訪問軍協定に署名したニュージーランドのような国と、手を取り合って取り組んでいる」「われわれの軍は、他の国家権力の手段と連携して、他国による国の領土、国民、自由、そして権利の神聖性への破壊を抑止する役割を果たしている」などと述べ、中国が進める「多極主義」でなく「多国間主義」を推進することで平和を守る考えを表明した。
同相は、式典後の記者団によるインタビューでも中国批判を展開。同日に中国がロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記を招いて戦勝記念式典を開き、「正しい側の歴史」を推進する考えを示したことに触れ、「歴史を正すとは何ごとか。法輪功や天安門事件で何が起こったのか」と指摘。「国際法を順守せず、反対する3人の指導者が共にパレードに参加しているのは恐ろしいことだ」とし、「中国が進める多極化では惨めな思いをするのは小国。ほとんどの比国民は望んでいない」と述べた。(竹下友章)