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日本とのつながり回復に努力 日系人会総会で塩村議員が決意

2025/8/25 社会
(左)首都圏マニラ市で開かれた日系人会の総会で、日系人の訴えに耳を傾ける塩村あやか議員(左)とフィリピン日系人リーガルサポートセンターの猪俣典弘代表(その右)。(右)父親の写真を見せる残留二世の上原アイダさん=23日午前、竹下友章撮影

塩村あやか参議院議員は残留二世含む日系人70人の前で、国籍回復・親族とのつながりの回復に取り組む決意を表明した

残留日本人の無国籍問題に取り組む塩村あやか参議院議員(立憲民主党)は23日、首都圏マニラ市でフィリピン日系人会連合会加盟の「マニラ中部ルソン日比協会」の総会に招かれ、二世含む約70人の日系人に対し、二世の無国籍問題の解決に加え、日本の親族とのつながりの回復にも取り組んでいく決意を表明した。

 戦後80周年の節目の訪問先をフィリピンに選んだ塩村議員は、あいさつで、「3年前に初めて比を訪問して以来、戦争を生き残った人々に会ってきた。そこで、戦争は80年たった今でも生き残った方々に影響を与え続けていることを知った。それ以来、議員としてこの問題の解決に取り組んできた」と振り返り、「もし戦争がなければ、二世は両親と比で幸せに暮らせただろう。日本人父らは子どもの成長を見守れただろう」と思いを馳せ、「戦争の惨禍は、決して忘れてはいけない」と強調した。

 ▽日本の家族とつながりたい

 「二世の母は日本人だと認めてもらえた。でも日本の親族は私たちの存在を認め、つながろうとはしてくれない。何か手助けしてもらえないか」。総会の質疑でこう訴えたのは、3世のルース・ナガイさんだ。

 それに対し塩村議員は、一昨年末に同議員発案のクラウドファンディングによる一時帰国事業を通じて父の故郷・沖縄を訪問し、親族との対面を果たした残留二世の金城ロサさん(日本名マサコさん)の例を挙げ、「金城さんのケースでは長い時間がかかったが、メディアの協力もあって親族対面が実現した成功例」と説明。「突然フィリピンに親類がいることを知らされても、日本の親族はびっくりするのが普通。けれど、メディアも活用し、成功例があることを分かってもらい、親族との対面はアイデンティティーの問題であって不利益があるわけではないとの理解を広め、政府の責任ある対応とも合わせて取り組めば、両国の親族がつながりを回復するためにかかる時間を短くできるはず」とし、「そういう努力を一緒にやっていきたい」と意欲を示した。

 ▽有力議員を動かしたもの

 塩村議員は18日に、サラ副大統領に肩を並べる次期大統領有力候補として知られるラフィー・トゥルフォ上院議員(日系三世)と会談した。当初は残留二世の無国籍問題を知らなかった様子のトゥルフォ氏だが、塩村議員らとの会談後に「残留日本人を探し、国籍回復を促す法案を策定する」と発表。20日には残留二世の名乗り出を求める呼びかけを自身のSNSを行うなど、迅速な動きを見せた。

 会うのが難しいとされるトゥルフォ氏との会談について、塩村議員はまにら新聞に対し、「トゥルフォ議員は同じメディア出身、上院(日本では参議院)の議員という共通点を強調されていた。偶然にも、私たちの間にこうした共通点があったことが、今回の会談実現につながったのでは」と説明。「トゥルフォ議員は無国籍問題を知ると、何度も『自分は弱い人々の立場に立つ』と言って責任感を持ってくれたようだった」と手応えを語った。

 その上で、「今回トゥルフォ議員が動いてくれることになった。これによって日本側がさらに力を入れるようになる期待もある。だからこれには丁寧に応じていく必要がある」と述べ、継続的な関与の意思を表明した。 当事者の平均年齢は83歳を超え、時間との戦いとなっている二世の国籍回復問題。塩村議員は「数年後、未解決のまま当事者が全員亡くなって問題を『消滅』させてしまったら、政府は非難を浴びることになる」と強調。

 政府に求めていく対応について、「石破首相に8月15日までの公費による一時帰国実現を強く要望したら、外務省も専用の予算がないなか、初の公費による一時帰国を実現してくれた。これは外務省として最大限の努力だったと思う」と評価した上で、「今年帰国するのは2人くらいになりそうだが、今年は助走期間。本番となる来年度から帰国事業専用の予算を確保することが非常に重要。向こう数カ月が勝負だ」と指摘。「親族対面や身元探しの実現に伴い、新たな状況が整ったら、それに応じて現行法を柔軟に運用したりして国籍回復に取り組むよう求めていきたい」とした。

 ▽早ければ早いほど

 オカモト、タケイ、シライシ、ヨシダなど、日本の名を受け継ぐ一族が結集した総会の会場には、日本国籍の回復がかなっていない二世も姿を見せた。その一人は、ラミレートで保護した父の写真と手紙を大切に携えていた1946年生まれの上原アイダさん(78)だ。上原さんはまにら新聞に「イロイロで漁師をしていた父・上原徳吉は、戦争で通訳として『アカツキ・シダン』と呼ばれていた部隊に徴用されたが負傷し、戦後、私を身ごもっていた母を残して強制送還された」と身の上を説明。「イロイロでは母でさえ日本人と親しいとしてゲリラの標的になった。私は小学校で『ハポン(日本人)、ハポン』と追い立てられたいじめにあった」と、戦中戦後の母子への迫害の経験を語った。

 今月上旬、初の公費による一時帰国事業で父の故郷を訪問した竹井ホセさん(82)も姿を見せた。「日本はとても良かった。(異母)弟は一人暮らしをしていたが、物静かだが好人物で、歓迎してくれた」と目を細めて振り返った竹井さん。「弟と一緒に父の墓参りができた。父には『何も心配いらない、天国で安らかにしてください』と伝えた。天国の母には、『おとうさんのお墓に行ったよ』と報告した。母も喜んでくれたと思う。(帰国を実現させてくれた)石破首相はいい方だ」と喜びを語った。

 その上で、自身を含む残留二世の国籍回復について「早ければ早いほどいい。日本政府はわれわれを助けてくれると期待している」と希望を口にした。

 日本国籍の回復を希望する残留二世は残り約50人まで減少。残った中には、母の妊娠中に日本人父が消息不明になった竹井さんのように、国籍認定が難しい非嫡出児のケースが多い。河合弘之弁護士ら就籍を支援する弁護団は今月、初となる非嫡出時4人の就籍申し立てを行ったことを明らかにしている。(竹下友章)

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