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「奇跡が起こった」 初の政府による帰国実現

2025/8/6 社会
訪日実現の喜びを語る竹井ホセさん。左はPNLSCの猪俣代表=5日、日本大使館で竹下友章撮影

石破首相に4月に面会した残留日本人二世の竹井ホセさんが政府事業として初の一時帰国。異母弟と面会

残留日本人2世の竹井ホセさん(82)=ラグナ州サンパブロ市在住=は6日、外務省の招へいによる帰国事業の第一号として日本に一時帰国する。日本政府は1986年の外務省領事移住部と国際協力事業団共同の「フィリピン日系人実態調査」以来、戦後フィリピンに残された無国籍のリスクを抱える残留二世の調査や身元探し支援を行ってきたが、日本人と比人との間に生まれた残留二世に対する政府のよる帰国事業は今回が初。

 竹井さんは4月末の石破茂首相の訪比の際に、首相と面会し、日本への帰国と国籍回復への希望を伝えていた。竹井さんは6日~10日の間日本に滞在し、大阪在住の異母弟ら親族と面会、父・銀次郎さんの墓参り、外務省への訪問などを行う。外務省はこれを皮切りに、随時一時帰国事業を実施する。一時帰国事業は親族探しのための大きな契機となるため、残る約50人の無国籍のリスクを抱えた残留日本人の国籍回復にとって、大きな一歩となる。

 竹井ホセさんの父・銀次郎さんは、太平洋戦争中、ホセさんの母ベニタさんが妊娠中に消息不明となった。そのため、銀次郎さんは父を知らずに育った。「高い教育を受け、比国鉄の技師をしていた」と母から伝え聞く父。実は戦火を生き伸び、戦後強制送還され、大阪に帰っていたことが判明したのは、父が既に亡くなって年月の経った2009年だ。

 母の妊娠中に日本人父と生き別れとなった竹井さんのようなケースでは、家庭裁判所での「就籍」を通じた国籍回復は困難。だが、大阪にいると分かった異母弟などの親族の協力によって国籍回復できる可能性も見えてきており、実現すれば、残る当事者にとっても大きな希望となる。

 出発前の5日に日本大使館で開かれた会見で、竹井さんは「長い間日本に行くことを夢見てきた。だが、出生書類や親の婚姻書類を求められてできなかった。戦争があり、長い月日も経っているため、そうした書類はない。もはや不可能と思っていた。訪日できることは、頭で分かってもいまだに実感できない」と心境を語った。そして「早期の訪日を実現するという石破首相の約束を果たしてもらえて、奇跡のように感じている。平和な時代が訪れ今になってようやくこうした機会をもらえた。首相、日本政府には心からありがたく思っている」と感謝を口にした。

 初めて訪れるもう一つの故郷・日本への滞在中に何をしたいか、との質問に竹井さんは「待ち望んでいたのは日本の親戚と会うこと。異母弟が私のことを兄と認めてくれたらうれしい」とし、「(政府に)自分が日本人の子だと認めてほしい」と語った。

 父の墓前で何を伝えるかとの質問には、「私は平和に暮らしている。私のことは悩む必要はないと伝えて、冥福を祈りたい」とし、「われわれは平和を好んでおり、親戚とも仲の良い付き合いがしたい」と語った。

 対日感情が厳しい戦後、日本人の容貌をしていることなどで小学校、高校、大学でもいじめに遭い、また卒業式などの際には、自分だけ父親がおらず、孤独を抱えて育ったと振り返る竹井ホセさん。ホセさんに付き添って会見に出席した息子のアベリノさんは、ときおり涙ぐみながら「私の父は、自分の父親がいないという人生を歩んできた。それは本当に、本当に辛いことだったと思う。父には長年夢見てきた日本での時間を満喫してもらいたい」と語った。

 ▽失われたつながりを取り戻す

 外務省と共に残留日本人の実態調査・国籍回復支援を行うNPO「フィリピン日系人リーガルサポートセンター(PNLSC)」の猪俣典弘代表は、「このニュースが伝わった瞬間、フィリピン日系人社会で大きな喜びの波が広がった。それは、日本とのつながりが切れてしまった二世が80年の節目につながりを取り戻せることになったからだと思う」と説明。「当事者の願いは二つ。失われた父、親戚とのつながりを取り戻し、そして日本人として認めてもらうこと」とした上で、一時帰国の重要性について、「親族が名乗り出、対面したということが、就籍をする上で大きな証拠になる。戦後80年たち、書類の証拠を出すのが極めて難しい中で、新たな証拠が生まれることになる」とし、今回の事業が報じられることを通じて、他の二世の親族の名乗り出が進むことに期待を表した。

 会見に同席した松田賢一次席公使は、初の政府一時帰国事業について、「今後も随時この事業を続けていき、当事者の切なる思いに本当に応えられるように、全力で日本政府として支援していきたい」と明言。「まだ見つかっていない残留二世の調査も並行して続けていく」と述べた。

 会見後、竹井さんは遠藤和也大使と面会。遠藤大使は「日本政府は残留二世が一日も早く国籍を取得できるよう、真摯に取り組んでいく」と伝え、大使館としても可能な限りの支援を行う旨を約束した。(竹下友章)

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