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ナボタス漁港

2002/7/7 社会

熱気うなるマニラの台所

 首都圏の下町中の下町、マニラ市トンド地区のスモーキーマウンテンを見ながら北上しナボタス町に入る。湾岸道路沿いには違法占拠住宅が延々と続く。左手に現れるのがマニラ最大の魚河岸、ナボタス漁港だ。魚港はいつも下町と相性がいい。

 朝九時、既にタホン(ムール貝)の水揚げが始まっていた。校庭ほどの敷地にトタン屋根の大きな吹き抜け市場が建つ。すぐ隣がマニラ湾の水面だ。

 タホンを満載したバンカ(アウトリガー船)がマニラ湾内の養殖場から続々と接岸する。貝を網ですくい、岸壁越しに三人がかりで運び上げ、高さ一メートルほどの南京袋に山盛りに詰める。手早く縫い合わせて葉巻型の貝俵にする。

 一俵は五十︱六十キロ。二人が手伝って人夫の肩に乗せると、手も使わずに軽々と仲買人のブースまで運んで行く。日々の労働に鍛えられた隆々たる筋肉が水玉をはじき飛ばす。近くの貧しい集落の幼い子どもたちが、落ちこぼれた貝を真剣なまなざしで袋に拾い集めている。

 鮮魚類も到着し始め市場の熱気はさらに増す。キス、カマス、ラプラプ(ハタ)、ワタリガニなど近海ものの魚介類にはじまり、パラワン産のキハダマグロやミンドロ産のトビウオも見かける。イトマキエイや一メートルものウツボが並ぶのはいかにも熱帯の市場だ。

 ナボタス漁港は活魚をほとんど扱っていない。鮮度の保持はもっぱら氷だのみだ。それでも、正午近くなると養殖もののティラピアが生きたまま水槽付きトラックに乗せられて到着し始めた。産地はラグナ湖などの淡水湖だ。

 江戸時代の東京湾は人間のふん尿や生活水からの栄養を「吸収」したため、魚介類の宝庫だったという。ラグナ湖という巨大な水がめと豊かな湾を持つマニラは、琵琶湖と江戸前の海が直結したような豊かな水域といえるかもしれない。

 フィリピンでは珍しく、たばこを吸いながら仕事をする男たちの姿を見ない。それどころではない熱気に市場全体がうなりを上げてているようだ。ぎっしり並ぶ魚おけの縁を平均台よろしく伝い歩いている人までいる。魚市場は青果・食肉市場と比べ、活気で勝る。それは一刻を争い「生きの良さ」を求めるためだ。まごまごしていると商品の価値が下がってしまう。

 ナボタス市場は卸売り専門ではない。パシッグ市から来たマイケル・ベラスケス君(17)はティラピア八キロ、バグス(ミルクフィッシュ)とハマチをそれぞれ二キロずつ誕生祝い用に買い込んだ。「誰の誕生日なの」と問うと、「自分のだよ!」と憤然と答えた。

 市場のけん騒は午後三時ごろまで続く。こぼれたタホンを拾っていた子どもたちも、ナイロン袋いっぱいの貝を手に入れていた。(岡本篤)

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