治水汚職に関与した政治家として名前が挙がっているロムアルデス下院議長は17日、下院本会議で「自分がとどまるほど、私、下院、大統領の負担が大きくなる」として議長職を辞任することを発表した。直後に次期下院議長を選ぶ投票が行われ、下院副議長の1人・ファウスティーノ・ディ議員が全議席の約8割を占める253票を獲得して新議長に選ばれた。ディー新議長は就任演説で「私は罪を犯した者や汚職した者をかばわない」と汚職に強い態度で望む姿勢を表明。「下院は変わる」と宣言した。
今回の下院議長交代は、請負業者から選挙資金を受け取っていたなどとして8日に解職されたエスクデロ前上院議長に続く動き。マルコス大統領が音頭を取る治水汚職追及のハレーション(余波)で上下両院議長の首がすげ変わったことになる。
最大与党ラカスCMDを率い、マルコス大統領の母方のいとことしてイメルダ・マルコス夫人の地盤(レイテ第1区)を引き継ぐロムアルデス氏は、大統領の忠実な盟友として議会の大多数を掌握、政権を支えてきた。しかし、今月8日、汚職疑惑の渦中にある実業家のディスカヤ夫妻が、公共事業発注を通じてキックバックを受け取った19人の政治家の一人としてロムアルデス氏の名を議会で挙げており、下院では「ロムアルデス下ろし」が活発化していた。
▽ディー氏は何者か
突如として正・副大統領、上院議長に次ぐ国家権力第4位の地位に就いたディー氏。フィリピンでも地元を除きあまり目立っていなかった同氏に対し、にわかに関心が高まっている。
ネットメディア、ラップラーによると、ファウスティーノ・ディー氏はカガヤン州を地盤とし、父は旧マルコス政権期から州知事を務めた人物。ディー氏も同州カウヤアン市長、同州選出下院議員、州知事と政治キャリアを築き、中間選挙ではマルコス大統領が名誉党首を務める連邦党の公認候補として下院に復帰した。典型的な「地方王朝型」の政治家だ。
英字紙インクワイアラーによると、ディー氏が選出された最大理由は、同氏の政党基盤が27議席のみを有する連邦党であることが、大多数にとって好都合だったため。ディー氏は最大与党ラカスCMDから票を得るため、ロムアルデス氏の後援を得たという。
同紙によると、ディー家はマルコス家支持の北部ルソン政治連帯「ソリッド・ノース」の一員。2022年のマルコス家の大統領復帰にも貢献した。(竹下友章)