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汚職役人は「恥を知れ」 ポピュリズム色鮮明に

2025/7/29 政治
施政方針演説を行うマルコス大統領=28日、首都圏ケソン市(大統領府が公開)

マルコス大統領が政権折り返しとなる4回目の施政方針演説。国家的課題にはほぼ触れず、ポピュリズム色の強い内容に

マルコス大統領は28日、首都圏ケソン市の下院本会議場で政権の折り返しとなる4回目の施政方針演説(SONA)を行った。前3回とは毛色が異なり、 中国との緊張が高まる中での国防やトランプ関税問題化での貿易政策、外資を呼び込むための行財政改革などの国家規模の課題にはほとんど触れず、キロ20ペソ米の供給の拡大、無料バス(ラブバス)の復活、食肉価格の引き下げの取り組み、貧困世帯への零細事業の起業支援の拡大など生活者目線の政策を打ち出しながら、農産物価格の釣り上げを行う中間業者や汚職役人に対する厳しい責任追及を宣言するという、「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」色の色濃い内容となった。前3回のSONAとは異なりほとんどがフィリピン語で話され、マサ(大衆層)への呼びかけに特化した特色となった。

 「(中間)選挙結果のメッセージは明確。国民は基本的な行政サービスに失望と幻滅を覚えている」。前半の3年間の落ち度を認める発言から始めた大統領は、演説の締めくくりに、インフラ整備事業の遅れの裏に腐敗と汚職があることを強く示唆し、「公金を横領し、国民の未来を奪おうと共謀する者たちよ、フィリピン国民に対し恥じを知れ」と気炎を上げた。さらに、直近の豪雨被害で全国で洪水・冠水被害が発生したことを念頭に、「洪水で流されたり、水没したりした私たちの家に対し、恥を知れ」と声を張り上げ、公共事業道路省に対し過去3年の全洪水対策事業のリストの提出させ、地域プロジェクト監視委員会には全ての未完了事業、失敗事業、そして「ゴーストプロジェクト」の精査をさせ、その結果を国民に公表すると明言。スタンディングオベーションを起こした。さらに、「26年度国家予算で国家支出計画と完全に一致しない予算法案は全て却下し、今年の予算法を再執行する」と宣言した。

 国民の鬱積した不満の元であるコメ価格の高止まりについては、政府がコメを買い取り、それをキロ20ペソの価格で供給するという政府事業に触れ、「農家に損失を与えることなく、キロあたり20ペソのコメを供給できることを証明した」とし、「この事業を全国の自治体にある数百のカディワストア(公設市場)に拡大していく」とした。

 雇用について失業率が約4%の低水準で推移していることに触れた一方で、「データでは企業信頼感は高まり、インフレは収束し、雇用は増加している。しかし国民が依然として苦しんでいるのなら、これらは飾りでしかなく、無意味だ」と発言。治安問題についても「犯罪率は減少しているといわれるが、犯罪被害者になるわれわれの恐怖や不安を和らげるものではない」と述べ、公式統計に基づく事実認識を、感覚論で否定する言説を大統領自ら採用。その対策として250万の貧困世帯が自分の零細ビジネスを持つための支援を強化するとし、また住民の安心のために警察が常に巡回し、通報5分内対応の体制を整えたことを強調した。

 ▽「大衆紙ネタ」を活用

 また、テレビやタブロイド紙で連日取り上げられていた、ラグナ湖への遺棄投棄疑惑のある闘鶏愛好者の大量失踪に言及。「闇の世界のシンジゲートによって発生した事件の解決に、政府が一丸となって取り組んでいる」とした上で、「民間人であろうと官僚であろうと、首謀者と関係者を徹底的に追及し、責任を追及する。彼らがどれほど強く、権力を持ち、富裕であろうと、法を免れることはできない」と断言し、喝采を浴びた。

 演説中盤では、スポーツ政策にも言及。スポーツに関する国家プログラムを創出し、学校でスポーツクラブを復活させ、全公立学校で競技会を実施するなどの振興策を取ると宣言した。その中で、政府の長年のスポーツ政策で成果を出した人物として、今月46歳でプロボクシングに復帰し、現役チャンピオンと互角の勝負をしたパッキャオ、比初の五輪金を獲得した女子重量挙げのディアス、男子初の五輪金を獲得したユーロなどを挙げた。それに続き、国家警察のトーレ長官の名を「新しいチャンピオン」として挙げるという、ドゥテルテ陣営に挑発的なユーモアにも踏み切り、会場を沸かせた。

 ドゥテルテ前大統領の逮捕を主導したトーレ長官は、前大統領の次男でダバオ市長代行のセバスチャン・ドゥテルテ氏が「殴り合いならお前をやっつけられる」と動画で挑発されたことを受け、ボクシングの試合を受諾を宣言。トレーニングの模様を公開した。それに対しセバスチャン氏は「全閣僚に麻薬検査すると大統領が宣言すれば受けて立つ」とトーレ氏の職権を越えた要求を突きつけ、さらに指定された試合日(27日)を前に、シンガポールに出国した。セバスチャン氏が「敵前逃亡」したことを受け、トーレ氏は27日に開いた豪雨被災者チャリティー試合で、不戦勝を宣言していた。

 

 ▽レームダック回避可能か

 上院候補に「ドリームチーム」を取りそろえ、万全の布陣で臨んだ中間選挙で上院候補の半数を落選させるという「敗北」を喫したことで、マルコス政権は残る3年の「レームダック」化がささやかれはじめている。

 そんな中、大統領は5月から「国民は失望している」と認めながら、学生や高齢者の鉄道割引を引き上げ、体感治安を向上させるために警察に随時巡回させるなど、「ローハンギングフルーツ」(すぐに手に入る果実)を追求する姿勢を明確にする一方、腐敗し、または「無能」な役人への処分を厳正に行うとの方針を明言した。

 自らを腐敗役人の責任を追及する側に置く言説は、本来は行政の長として自身が負っているはずの責任の転嫁と認識された場合、民意が離れる危うさを伴うが、6月の調査では、ドゥテルテ氏が逮捕された3月以降30%台まで落ち込んでいた信頼率が48%まで回復するなど、一定の成果を見せた。そのため、同じ言説をSONAで強く打ち出したとみられる。(竹下友章)

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