「ヘリ空母」としても知られる海上自衛隊ひゅうが型護衛艦「いせ」(197メートル)が21日午前10時半ごろ、護衛艦「すずなみ」(151メートル)と共に、首都圏マニラ市マニラ南埠頭に寄港した。「海自による自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現のための「インド太平洋方面派遣」(2019年正式開始)の一環。「いせ」は14日、比海軍のパスクア・レオポルド中尉含む東南アジア・太平洋19カ国の士官ら20人を乗せ日本を出発、マニラ着までの8日間、艦内での多国間協力プログラムを実施した。同艦は2016年にサンバレス州スービックに寄港しているが、首都マニラへの寄港は初めて。24日まで停泊する。
矩形(くけい)の輪郭、船橋設備以外の部分が飛行甲板となっている構造――。マニラ湾に屹立(きつりつ)する「いせ」の形は、まさに小型空母だ。眼前に臨むとその艦体は視野に収まりきらず、ビルを見上げるように仰ぎ見なければ船橋が見えない。同艦には艦載ヘリだけでなく、垂直離着陸機「オスプレイ」の発着艦と格納が可能であることが確認済みという。
▽寄港は「平和と安定に寄与」
同艦に乗ってマニラ入りした海自第4護衛隊群司令の夏井隆海将補は、比海軍のバットゥン准将らの出迎えを受けた後、飛行甲板上で会見を開いた。「この活動は特定国を想定したものではない」と断りながら、直近の中国海軍の活動についての質問に「わが国周辺の海域でも活動を拡大・活発化させている」と回答。その上で、「力による一方的な現状変更やその試みは、自由で開かれた国際秩序に対して深刻な挑戦だ」と強調した。さらに中国軍艦船への対応について「平素から万全の警戒監視活動を行っている」とし、今回の航行・寄港が「地域の平和と安定に寄与し、自由で開かれたインド太平洋の実現に資する」と指摘。海自がインド太平洋でにらみを効かせながら、「共同訓練等を通じて戦術技量を向上させる」(海自声明)ことの意義を説明した。
「比日部隊間協力円滑化協定(RAA)の発効後、西フィリピン海(南シナ海で比が権益を主張する海域)の安全保障のために海自がフィリピンに対して提供できる新たな協力は何か」との質問には、「比との協力活動に関する手続き・調整等が円滑化され、比海軍との部隊間訓練や人的交流の一層の促進が期待される」と述べた。
同部隊の今後の活動については、「志を同じくする地域のパートナー諸国」との共同訓練を含む協力活動を「これから3カ月間にわたり実施する」としたが、比海軍との共同訓練の可能性については「まだ調整中だ」と述べた。
「いせ」乗組員によると、日本からマニラまでの航行中に中国艦艇に遭遇したかは「秘密」。一方で、防衛省統合幕僚監部の発表によると、先月末から中国空母2隻が宮古島海峡とルソン海峡を通過して太平洋上で訓練を実施。先月26日に東シナ海側から太平洋に向かい宮古島海峡を通過した空母遼寧(304メートル)は、今月19日に東シナ海に向かって宮古海峡を再通過。一方空母山東(315メートル)は7日までにルソン島と台湾の間のルソン海峡を南シナ海側から通過し、19日には同海峡向かって再接近していることが確認されている。(竹下友章)