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ポピュラー・ブック・ストア

1999/7/18 社会

「社会派」知識人を支える

 書店名は「ポピュラー・ブック・ストア」だが、書棚にぎっしりと内外のアカデミックな文献が並ぶ学術専門店がマニラの下町にある。

 軽量高架鉄道LRTのドロテオ・ホセ駅から歩いて一分。クーラーの効いた百二十平米ほどの店内で大学関係者ら固定客が静かに専門書のページを繰る。国内ではここでしか手に入らない「洋書」も少なくない。表通りの喧騒とは別世界の空間だ。

 約五千冊ある書籍は、欧米の思想、文学書、フィリピンの社会、政治学論文、タガログ語、英語で書かれた文芸作品、女性学研究書から政府統計資料やNGO関連文献と多岐にわたる。そんな中で、毛沢東語録や共産主義思想の文献が目を引く。

 この店は一九四五年、中国系二世のホアキン・ポーさんが兄弟三人と開いた。最初は、近くにあるマプア工業大学やファー・イースト大学などの学生を相手にした書店だった。

 しかし、当時は第二次世界大戦直後の荒廃した時代。世界の思想的潮流を学生に伝える必要があると考えたホアキンさんは、戦後世界を席巻した新思想を即座に紹介した。「実存主義」はもちろん、マルクスやチェ・ゲバラなどの共産主義や革命思想、それに父親の故郷、中国大陸の「毛沢東思想」の文献も。

 現在のオーナーはホアキンさんの娘、キャサリン・パロメラさんで、十七年前から経営に関わっている。

 彼女は、ホアキンが共産主義者の容疑で五一年に国軍に捕らえられた様子を話してくれた。「共産主義者追放キャンペーンを始めたマグサイサイ国防相に最初に逮捕された一人が父親でした」

 「フク団」と呼ばれた共産主義者に密会の場所を提供したという疑いだが、書店の常連だった新聞記者らが連日、一面トップで無実と違法拘留の問題を取り上げたため、一カ月後に釈放されたという。

 マルコス政権になってからも、外国からの文献の仕入れで、当局の横やりや検閲は続いたそうだ。

 昨年、「社会と向き合う専門書の輸入は止めないように」。こう言い残して、ホアキンさんは昨年、亡くなった。

 最近、フィリピンの書店経営は大型化し、また、時流に乗ったコンピューターなどの専門書を並べる店が多い。しかしキャサリンさんは父親の遺言を受け継ぎ、これからも「社会派」専門書店を守り抜く決意が固いようだ。 (澤田公伸) 

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