4日の自由民主党総裁選挙で高市早苗前経済安全保障担当相が同党結党以来初の女性総裁に選ばれた。15日にも国会で開かれる首班指名選挙で初の女性首相に選ばれる見込みだ。フィリピン主要メディアは大手通信社の配信記事で同ニュースを取り上げ、高市氏を「ウルトラ保守」「強硬派ナショナリスト」などと紹介した。
フィリピンでのクオリティーペーパーの代表格・英字紙インクワイアラーは5日付の紙面で、AP電を使用し、「強硬ウルトラ保守派」で「対中タカ派」の高市氏が「日本初の女性首相になる見込み」と報道。「長年日本を統治してきた男性優位の自民党の中でも最も保守的な一人である彼女が、歴史を作る」とした。さらに「英国のマーガレット・サッチャーを尊敬し、安倍晋三元首相の『ウルトラ保守的』なビジョンの申し子であり、戦時中の軍国主義のシンボルである靖国神社の常連参拝者だ」と紹介し、「歴史修正主義的な立場は中国、韓国との関係を複雑化させる」とし、参政党との連帯を念頭に「彼女は『極右グループ』との連帯にもオープンだと」した。英字紙マニラブレティン電子版も同記事を配信した。
保守寄りの英字紙トリビューン電子版は4日、AFP電を使用し、高市氏を「与党の断固とした保守主義の総裁」と報道。「世代交代を狙う元首相の息子でサーファーの44歳・小泉進次郎氏、カリスマ性は薄いものの経験豊富な林芳正氏を破り、当選を果たした」とし、「彼女は『アベノミクス』に呼応し、積極的な金融緩和と大規模財政政策を掲げているが、それが実施されたら市場を動揺させかねない」と、高市氏の「積極財政」路線に懸念を示した。
比の民放最大手GMA電子版は4日、ロイター電を使用し「日本の与党は『保守的国粋主義者』の高市氏を総裁に選んだ」と報道。「日本最初の女性首相となり、投資家と近隣諸国を動揺させようとしている」とした。フィリピンメディアによる次期首相の第一報は、欧米系通信社を通じて概してネガティブなものとなった。
高市氏は4日の総裁就任会見で、日米同盟を確認することに触れた上で、日米韓、日米豪、そして日米比の協力の必要性を指摘。「自由で開かれたインド太平洋のため、もっと日本が前に出て世界平和に貢献できるようにする」との考えを示した。フィリピンに対して無関心と懸念されていた米トランプ政権も、安全保障協力については比に強く関与する姿勢を示しており、高市政権でも先月に部隊間協力円滑化協定(RAA)が発効したばかりの比との安全保障協力が推進されるとみられる。(竹下友章)