シンクタンク・ストラトベース研究所は、日本大使館との共催で「Pilipinas Conference 2025」初日を開幕し、政府関係者、外交団、地域のサイバーセキュリティ専門家を招いたハイレベルフォーラムをマニラのペニンシュラホテルで開催した。
■ 日本の遠藤和也大使「単独での対処は不可能。国際協力が不可欠」
遠藤和也駐フィリピン日本大使は、世界的にサイバー攻撃が急増している現状を説明。
日本の監視データとして、
2024年のサイバー攻撃関連通信:6860億件
2015年:630億件
と、9年で10倍以上に増加したことを明らかにした。
遠藤大使は、
「サイバー空間の脅威に単独で立ち向かえる国は存在しない。国際協力は不可欠だ」
と強調した。
さらに、日本が支援する ASEAN-日本サイバーセキュリティ人材育成センターがこれまでに4,400人を訓練し、フィリピン人がその中でも最も積極的な参加者であることに触れた。
「日本は今後もフィリピンと協力し、サイバー能力を強化するとともに、自由で公正、安全なサイバー空間の維持に貢献していく」と述べた。
■ 比情報通信科技省のアグダ長官「デジタル競争力の低下は国家存続の問題」
ヘンリー・アグダ情報通信科技(ICT)省長官は、フィリピンのデジタル化の現状について厳しい分析を示した。
「デジタル破壊は理論ではない。国家の生存に関わる問題であり、サイバーセキュリティと不可分だ」と述べ、
デジタル経済のGDP寄与度が2024年に 8.4%へ低下したことを stagnation(停滞)の象徴とした。
「これは許容できない。問題の中心にいるのは“人”だ」と強調した。
アグダ長官は、政権のデジタル戦略として:
デジタルインフラの迅速な展開
政府・産業界の積極的なデジタル導入
デジタルガバナンスの強化
を掲げ、「勢いを取り戻すには、政府と産業界が共に動かなければならない」と述べた。
「我々はハイパー指数的な成長を目指している。不可能だと言う者もいるが、言いたい。見ていればわかる」と語った。
■ 豪・加・EUが参加、AI脅威や重要インフラの脆弱性を議論
フォーラムには、
マーク・イネス=ブラウン豪大使
デービッド・ハートマン加大使
マッシモ・サントロEU大使
も参加し、以下を強調した:
国境を越えた情報共有の深化
国家レベルの統合的インシデント対応体制
公民連携によるサイバー防御強化
議論では、サイバーリスクがすでに従来型のハッキングを超え、
AIを用いた攻撃、重要インフラの脆弱性、地政学的影響工作へと移行している現状が共有された。
こうした問題はインド太平洋地域のデジタル安全保障にとって中心的課題になっているという。



