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10月29日のまにら新聞から

「11月1日に来たかった」 封鎖前のマニラ市南部墓地

10月29日〜11月3日、新型コロナ対策で墓参のための墓地立ち入りが禁止

[ 1910字|2021.10.29|社会 ]
生後5カ月の長女を抱いた、南部墓地の「ケアテイカー」、ベルナード・ラヨグさん=28日、首都圏マニラ市で岡田薫撮影

 万聖節にあたる11月1日前後、亡くなった家族や親族、友人に想いを馳せる墓参者で、通常であれば全国の墓地は賑わう。政府は昨年に続き今年も10月29日〜11月3日、新型コロナウイルス対策で、墓参者の墓地立ち入りを禁じた。首都圏マニラ市の南部墓地を封鎖前日の28日午前に訪れると、18歳未満の入園が禁じられ、墓参者もまばらだった。

 一方で、フェイスシールドの厳格な着用や、入り口でのワクチン接種カードの提示を求める姿は見られなかった。

 年々減少の一途をたどっているが、墓地内に居住する一部住民が生計のためサリサリストアや行商を営み、サンドイッチや焼き鳥、ジュースなどの軽食を売っていた。墓地への飲食物持ち込みは禁じられ、かつて一般的だった親族一同での酒盛りやカラオケなどのパーティー風景は、政府の取り締まりで、コロナ以前から見られなくなった。

 娘を肝臓疾患で、夫を脳卒中で、相次いで亡くしたネニータ・ブエナフロアさん(57)は子7人の母だ。「本来であれば死者と過ごす11月1日に墓を訪ねたかった」とブエナフロアさん。次男のジャンポールさん(25)と、ラグナ州の自宅を早朝に出発。寄り道をしながら午前9時ごろに到着。封鎖が始まる午後5時を前に「午後4時ごろまでいたい」と話した。34歳で亡くなった娘には10歳になる子がいる。「娘の夫は後で合流するはず。でも子どもは連れて来ることができない」と残念がった。

 ある墓の前には、2016年11月15日に62歳で亡くなったマニラ市のジョーイ・ヒソン元下院議員の親族数人が集まっていた。親族は毎週のように墓を訪ねるという。生前、最後にヒソン氏が旅行した先は日本だった。「彼は日本の食べ物や文化が大好きだった。私たちも新型コロナが明けたら真っ先に行きたい国は日本」と親族の女性は笑顔を見せた。

▽墓地住民は収入減に

 墓地の住民は大半が、特定の墓やその周辺の掃除を行う「ケアテイカー(管理人)」として定住、墓を訪れる故人の親族と月額100ペソ程度の報酬契約で墓を管理し、生計を立てている。

 生後5カ月の長女ピアちゃんを腕に抱いたベルナルド・ラヨグさん(38)は、約30個の墓の面倒を看ている。だが「訪れた遺族は少なく、年間費用を回収できたのは8人だけ」と先行きを心配していた。5年前に同墓地へ来る前は、カロオカン市の墓地で同じ仕事をしていた。最近オートバイを買った。「お金をためてサイドカーを買い、それでトライシクルにするつもりだ」と胸を張った。

 南部墓地に隣接するバランガイ(最小行政区)サンタクルスの事務所で、新型コロナ・パトロールの一員として働くジンボ・オルランドさんは、墓地で生まれ育った。「イスコ・モレノ市長の指示で、ここの住民対象のワクチン接種は7月に始まった。すでに全員が終えている」と明らかにした。封鎖中の6日間は「1日3食の弁当が住民に支給される」とも語った。しかし、モレノ氏に投票するかを問うと「それはない」とし「人それぞれ政治信条は異なる」と言葉を濁した。

 一方で、別の家族は「昨年弁当などの支給はもらっていない。墓地封鎖中は市場に食料を買いに出ることはできたが、収入もなく困った」と振り返った。

 ▽イスラム教徒墓地も

 南部墓地内に建設され、今年6月7日に開設されたマニラ・イスラム教徒墓地には、現在31人の墓がある。導師を務めるナッシュ・ハサン氏によると、敷地内には計600体の埋葬が可能で、15歳未満の子ども用、15歳以上の男性用2カ所、女性用1カ所の4区画に分かれる。すぐ隣で何層にも積み重なるカトリック教徒の墓とは異なり、芝生の土が人1人分ほど盛り上がっただけのシンプルな墓。上に重ねて埋葬することは禁じられているという。

 芝生に1メートル30センチほどの深さに掘った穴が2つあった。「今朝掘ったもので、今日は午後にシリア人とパレスチナ人の男性2人が入る予定だ。マニラ市のイスラム教徒向けだが、外国人であっても交渉次第で分け隔てはない。費用は基本的に無料だが、穴を掘ったり、木材を差し挟む費用、または作業費などが掛かる」と明言した。一角には、すでにイスラム教徒の日本人の比人妻が眠る。

 南部墓地入り口近くに設置された国家警察事務所の担当者によると、28日は警察官29人が墓地内に配置され、それ以外にも十数人のバランガイ(最小行政区)職員らが墓地外で車や人の誘導に当っていた。「今日午前7時〜午後2時20分までの墓参者は約5020人となり、現時点で約4千人が墓地内に留まっている」と話した。(岡田薫)

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