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8月8日のまにら新聞から

比米合同哨戒は「実施可能」 南シナ海問題で外務相

[ 918字|2022.8.8|政治 (politics) ]

マナロ外相がブリンケン米国務長官との共同記者会見で「南シナ海における比米合同哨戒は実施可能」と述べた

マナロ外相=6日、外務省オンライン会見

 マナロ外相は6日、ブリンケン国務長官との共同記者会見で、南シナ海(比名・西フィリピン海)における「比米合同哨戒は比米相互防衛条約の範囲内で実施可能だ」との見解を示した。比米合同哨戒構想は領土問題で中国との対立が激化したノイノイ・アキノ政権期に具体化が進んだが、中国と親和的な外交関係の構築を目指したドゥテルテ前大統領に反対され棚上げになっていた。

 マナロ外相は「相互防衛条約は比米関係の柱であり、南シナ海合同哨戒は相互関係を深化するにあたって取り組める課題の一つだ」と指摘。比国軍、米国インド太平洋軍などで作る「相互防衛委員会(1958年設置)、安全保障委員会(2006年設置)の両委員会でも検討可能だ」と述べた。ペロシ米下院議長による訪台を受けた中国軍による大規模な軍事演習により台湾海峡で緊張が高まる中、同外相による比米合同哨戒に関する発言は比中関係に波紋を広げそうだ。

 ノイノイ・アキノ政権期に外相を務めたアルバート・デルロサリオ氏は任期中、当時米国務副長官だったブリンケン氏を2度訪問。南シナ海合同哨戒案について協議を行っている。デルロサリオ氏は2021年4月1日に出した声明で「合同哨戒案は合意に達していたが、ドゥテルテ政権では中国を怒らせることを恐れ、棚上げになった」と明かしている。

 デルロサリオ元外相は「バイデン政権下でブリンケン氏が第71代国務長官に抜擢された今、西フィリピン海で恫喝的な戦略を取る中国に対抗するため、合同哨戒案の再検討は必要不可欠だ」と主張している。

 中国政府は南シナ海の南沙諸島(比名カラヤアン諸島)、中沙諸島、西沙諸島を取り囲む独自のU字型の破線「九段線」により、同海域を自国の管轄権内と主張しており、比と対立してきた。

 2016年の仲裁裁判所判断では、中国側の主張を全面的に退け、2012年から中国が実効支配する中沙諸島スカボロー礁近海で比人漁師による漁業を中国海警局が妨害していることについて「比の漁業権を侵害している」との判断を下している。

 米国は同判断の根拠の一つとなっている国連海洋法条約には加盟していないものの、同判断を公式に承認・支持している。(竹下友章)

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