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3月29日のまにら新聞から

政治家も学ぶことを願う 検査のVIP対応

[ 632字|2020.3.29|社会 (society)|新聞論調 ]

 保健省は新型コロナウイルスの検査キット不足を理由に、誰に対してもVIP扱いはない、と説明を続けている。実際のところ、政治家の中には症状がなくても、数に限りがあるキットを使って陰性を確認しただけのケースが多々あった。

 報道によると、熱帯医学研究所では、無症状の政府高官34人の検査が優先的になされていたという。VIPたちは検査結果を24時間以内に出すよう要求。そうした中でケソン市のフィリピン心臓センターの医師イスラエル・バクトル氏の検査結果が出たのは4日後だった。同氏は感染のため、21日に死亡した。

 1億人以上の人口を抱える比の検査キット数は20万未満で、大半が外国からの提供だ。限られたキットを無症状の人に使用しない、免疫不全の人や高齢者、感染者と日常的に接する医療従事者らに限るなど、明確で賢明なルールが必要だろう。

 なぜ政治家は得意げに「陰性だった」と言えるのか、甚だ疑問だ。こうしたVIP対応を拒否したことが原因で、同研究所のセリア・カルロス所長が解任されたと報じられた。世間から批判が相次ぎ、保健省はカルロス氏の役職復帰を確認した。同研究所の検査の優先順位に裏で采配を振るっていた人物は現役の内閣次官補だったとも言われている。

 危機の利点の一つは、政治家ら国家公務員が化けの皮を現すことかもしれない。国民の利益優先をもっともらしく説く彼らも、失敗から学んでいくはずだ。彼らが公衆に向けて本来とるべき姿はその先にある。(27日・スター)

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