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11月16日のまにら新聞から

恐怖におびえる小作農たち 現政権下の「小作農の月」

[ 793字|2018.11.16|社会 (society)|新聞論調 ]

 10月は「小作農の月」だったが、農務省と農地改革省はそのことに言及しなかった。政府はメーデーや祭りの季節である5月も「農民と漁民の月」として定めている。しかし、貧しくて奴隷のような条件で働き、技術革新に遅れを取っている状況からすると小作農の月という表現が近い。

 この10月にミンダナオ地方コンポステラバレー州で農民組合メンバーの53歳の女性が誘拐され、同地方で62歳の先住民の農夫が自分の耕作地で殺されているのが発見された。また、西ネグロス州サガイ町では未成年2人を含む農夫9人が虐殺されている。そして11月6日には虐殺された農夫の遺族たちを支援してきた弁護士も射殺された。

 筆者はマニラで育ち、叔母の支援や奨学金を受けてアテネオ大学で勉強できた。祖父がミンダナオ地方アグサン地域に退職金をつぎ込んで購入した土地があったので、大学卒業後にそこでカカオ農園を始めた。農園で雇う農夫2人の給料を捻出するため執筆業と私立学校での教員職を掛け持ちした。ネグロス島などのサトウキビ大農園主が農夫らに支払うわずかな賃金に比べると自分の方が高い賃金を払っていると自負している。

 農夫9人が虐殺された直後にブトゥアン市で戒厳令に反対するミンダナオ地方の農夫たちが集まる抗議集会が開かれた。カラガ地域南部の先住民たちも山をいくつも越えて徒歩でやってきた。そこで比大出身の農業技師に出会った。彼は高給が約束されている技師職を辞退し、化学肥料などを使わない代替農法を先住民に教えている人だった。

 今年の小作農の月はドゥテルテ政権の影響が色濃く反映されていた。農民たちが「違法に土地を占拠している」として焼き殺された。彼らを支援する者たちが強制送還され、暗殺された。この国では耕地から作物を育てるという職業は、恐怖におびえる生活を選ぶことになるのだ。(14日・インクワイアラー、DLSピネダ)

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