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3月21日のまにら新聞から

虎の威を借る運動 著名親族と選挙

[ 729字|2016.3.21|社会 (society)|新聞論調 ]

 比の政界にとって癌(がん)とも言える傾向は、死去した著名な親族の名を借りて選挙運動を展開することだ。

 アキノ大統領は常に、1983年にマニラ空港で暗殺された父、ベニグノ・アキノ元上院議員に言及する。前回大統領選で当選したのは、その前年に母、コーリー・アキノ元大統領が死去し、国民による同情心が原動力になったからにほかならない。

 ポー上院議員も、2004年大統領選に敗れ、病死した映画俳優の父、フェルナンド・ポー氏を引き合いに出す。副大統領候補のロブレド下院議員は、2012年に飛行機事故で死亡した夫、ロブレド元内務自治長官について述懐する。

 この傾向は問題だ。死去した親族に言及する価値が無いということではなく、彼らが持っていた資質が子孫に遺伝するわけではないからだ。

 アキノ大統領が両親の功績に言及する際、自身を彼らのカリスマ性に結びつけたがる。ポー上院議員が父の意思を引き継ぐと言った場合、それは何を意味するのか。父が培った名声は、政界における実績とは関係がない。そのカリスマ性は認められるが、父は貧困対策を実施したわけではない。

 ロブレド議員はこれまで、政治家を熱望したことはなかった。ところが夫の死後、急激に使命感を抱き始めた。夫と同じ任務を果たせるのは自身以外に存在しないと勘違いしているはずだ。

 今は亡き親族の思い出を語ることは、国民の感情をあおる意味においては政界入りへの近道かも知れない。しかし、それが指導者を選ぶ基準となるべきではない。死者の名前を悪用する政治家は、それが便利だからではなく、有権者が適切な候補者を知らないと理解しているからだ。その考え方は間違っていると証明する必要がある。(16日・スタンダード)

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