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12月6日のまにら新聞から

世界的増加の実態認識を 女性への暴力

[ 663字|2020.12.6|社会 (society)|新聞論調 ]

 「暴力」という言葉で頭に浮かぶのは銃、血しぶき、それとも痛みによる悲鳴だろうか? 加えて、今ではネット上での言葉による暴力の増加が著しい。中でも女性に向けられる暴力が圧倒的に多い。

 11月25日は「女性への暴力撤廃を求める国際デー」だった。国連は「新型コロナウイルスの大流行以来、家庭内暴力をはじめ、女性・女児に対するさまざまな暴力が増加した」と報告、「シャドウパンデミック」(隠れた大流行)と名付けている。

 コロナ禍以前の1年間でも、親密なパートナーに虐待されたと報告した女性は女児を含め、世界中で2億4300万人に上った。しかし、実際に訴える人は被害者全体の40%にも満たないという。

 世界保健機関(WHO)の「病力と健康に関する世界報告書」では、暴力は「自分や他人、集団、地域社会に向けた脅迫や傷害、死に至らせることを含む意図的な力の行使、心的危害、発育不全や尊厳の剥奪をもたらすこと」と定義され、実際に多様な面がある。「基本的な権利の否定」という場合もあり、戦争や紛争、武器がない所でも暴力は常に存在している。

 男性を基準に社会が作られている以上、男性が危険にさらされる場面が現状では少ないのが当然だ。男性が危険と感じないということは、危険が存在しないことではない。カナダ人女性作家のマーガレット・アトウッドの解釈では、男は女に笑われることを恐れ、女は男に殺されることを恐れる。平等なくして平和はない。女性への暴力の実態を認識しない限り、平等の達成もないだろう。(1日・スター、エメリン・ビリヤール)

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