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10月19日のまにら新聞から

歩み寄れる妥協点を 政府と共産党の和平交渉

[ 800字|2018.10.19|社会 (society)|新聞論調 ]

 本紙のアン名誉会長がこのほどオランダでインタビューした比共産党の最高指導者、ホセ・マリア・シソン氏はドゥテルテ政権との和平交渉再開に向けた扉を閉じたわけではないと言明している。比国防省と国軍による干渉がなければ和平交渉は再開していたというのだ。同氏の話が真実であれば、ドゥテルテ政権は閣僚の国防・治安担当者らによって和平交渉より軍事的解決の方がより現実的だと説得させられたことになる。その結果、大統領は今年6月28日に予定されていた比共産党らとの和平交渉再開をキャンセルした。

 実は、この交渉をキャンセルする前に、全国レベルの和平交渉に関する公聴会が開かれる手順だった。しかし、4カ月経過しても政府はまだこの公聴会を実施しておらず、民族民主戦線(NDF)側が主張していた通り、政府が和平交渉を凍結するための理由づくりに使われた可能性がある。

 閣僚の治安維持担当者には、軍事的解決が最終的なものとはなりえないことをはっきりと伝えたい。国軍が推定している新人民軍の兵力が4千〜5千人だとしても、また、ある情報筋の言う最大1万3200人までの規模があったとしても、いずれも掃討することはできない。最近もNDF顧問らがラグナ州で拘束されたが、それぐらいで弱体化するわけではない。2014年に新人民軍の最高指導者だったティアムソン夫妻が逮捕された際にもそんなことにはならなかったのだ。

 シソン氏によると、半世紀続く反乱軍の活動は、国内に飢餓や虐げられた民衆が存在する限り下火になることはない。これまでの和平交渉では農地改革や地方開発、国内工業化の分野で合意していた。6月からの再開交渉では社会的・経済的改革が議題に上る予定だった。しかし、共産党側にも新人民軍による停戦協定違反を阻止する努力が求められる。いずれにせよ両者は極端な道を求めず、歩み寄れる中間地点で合意してほしい。(17日・タイムズ)

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