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6月6日のまにら新聞から

報道関係者の殺害を解禁?  次期大統領発言

[ 709字|2016.6.6|社会 (society)|新聞論調 ]

 報道関係者の殺害をまるで擁護するような、ドゥテルテ次期大統領の発言が波紋を広げている。ミンダナオ地方ダバオ市で行われた記者会見で、4月下旬に首都圏マニラ市キアポ地区で起きたフィリピン人記者の殺害事件について意見を求められ、「ジャーナリストが間違った行為をした場合、報道の自由が彼を守ることはない」というドゥテルテ発言が飛び出したのだ。この発言は、報道関係者の殺害解禁の発表だったのだろうか。

 ドゥテルテ氏は、2003年の記者殺害事件を例に挙げ「報道機関の汚職関与が原因」と述べた。しかし、犯人はいまだ逮捕されておらず、汚職に関わったかどうかも証明されていない。過去30年で殺害された100人を超える報道関係者や、先日マニラで発生した殺人事件に関しても汚職との関わり合いは不明だ。

 確かに国内の報道機関は他業界と同じように、自らの組織にも汚職がはびこっていることを認めている。汚職問題は存在する。ならば法が犯罪を防止し、罰するべきだ。かつて比で死刑が実施されていた時代にも、汚職は死刑に相当する犯罪ではなかった。死刑が廃止され、民主主義をうたう現代の比では殺人はなおさら許されるべきでない。

 比では殺人事件の犯人が逮捕されないことも多い。報道関係者の殺害でもそれが理由となり、比を世界でもトップクラスの報道関係者にとって危険な国にしてしまった。ドゥテルテ氏は「真実を述べているだけ」と自己弁護するが、元検事なら、殺人事件の場合でも犯人が逮捕されて、ようやく真実が明らかになるということは十分に理解しているはずだ。彼が報道機関を糾弾するならば、先に犯人が逮捕され、真実が明らかにされるべきだ。(2日・スター)

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