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1月12日のまにら新聞から

南シナ海共同調査は違憲 比中資源探査への影響必至

[ 994字|2023.1.12|経済 (economy) ]

最高裁が05年に調印された比中越石油公社による南シナ海共同探査合意に違憲判決

 最高裁大法廷は10日、2005年に調印された比・中・ベトナム3国の石油公社による共同海底調査計画の合意に対し、賛成12、反対2、棄権1で「違憲かつ無効」との判決を下した。最高裁は同合意が「天然資源の探査、開発、利用を国の完全な管理・監督下に置き、比国民だけが領海および排他的経済水域(EEZ)の資源を利用できる」と定めた比憲法12条2項に反すると判断した。同合意は08年に期限切れとなっていた。

 マルコス大統領の公式訪中に合わせて出された比中共同声明=5日付=は、2016年の仲裁裁判所判断で比のEEZ内だと認められている南シナ海レクト堆の埋蔵天然ガスに関する共同探査を念頭に、比中間で結ばれた2018年の「海底天然ガス開発に関する覚書」について、「(同覚書の)『趣旨』に留意し、共同探査交渉を継続することで合意した」と明記。マルコス大統領は帰国後、前政権で交渉が打ち切られていた共同資源探査の再開に前向きな姿勢を示していた。

 今回の最高裁判決は、それとは別の共同海洋調査計画に関する判断ではあるが、比のEEZ内で外国と共同探査すること自体に対し、司法から明確な実現困難性が突きつけられた格好となった。

 05年合意は、比国営石油公社 (PNOC)、中国国営の中国海洋石油集団有限公司 (CNOOC)、ベトナム国営石油最王手のベトナム石油ガス公社(ペトロベトナム)の3社が南シナ海(比名・西フィリピン海)の海底14万2886キロメートルのエリアに対し、予備的な調査活動をするという内容。

 05年3月14日に3カ国が合意文書に調印した直後、左派政党「バヤンムナ」のサトゥル・オカンポ元下院議員、テオドロ・カシニョ元下院議員らが、合憲性の審査と調査活動禁止を求め国を提訴。国側は「この事業は予備的調査であり、(憲法が禁じる海外の事業体による)探査、開発、利用に当たらない」と主張していた。最高裁は合意文書中の「3社は南シナ海の特定区域における石油資源の調査に関わることを希望する」という文言を引用し、探査に当たると判断した。

 なお、ロティリヤ・エネルギー相は、5日の比中共同声明について「合意は交渉・協議の再開であり、レクト堆の探査については触れていない」と指摘。レクト堆以外の場所の国内石油・天然ガス開発事業に対する外国企業の参加に前向きな姿勢を示している。(竹下友章)

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