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9月7日のまにら新聞から

ボホールのメガネザル保護区

[ 1125字|2003.9.7|文化 スポーツ (culture)|名所探訪 ]

商業利用される希少動物

 セブ島の南東にあるボホール島はメガネザルの生息地として有名だ。円すい型をした丘陵群の景勝地「チョコレートヒル」とともにボホール観光のシンボル的存在として知られる。

 メガネザルは主に二カ所でみることができる。一つは州都タグビララン市からチョコレートヒルに向かう途中にあるロボック川の川下り船の乗り場。もう一つは同市から北東に十四キロ離れたコレリア町にあるフィリピンメガネザル自然保護区だ。

 川下りの船乗り場は数カ所ある。観光客が訪れれば、船貸し屋がおりやかごの中で飼育されているメガネザルを出してくれる。商業目的の所有が禁じられているためか、カンパ名目の箱が置いてあるだけだ。ここでは観光客は手で直接メガネザルに触ったり肩や頭に乗せて記念撮影もできる。約十匹所有する船貸し屋によると、一日当たりの観光客は百人以上という。

 一方、広さ約百七十五ヘクタールの自然保護区に訪れる観光客は一日十人程度。この自然保護区を管理する民間団体「フィリピンメガネザル基金」のカリト・ピサラスさん(58)は「ガイドは観光客を連れて行けばチップをもらえるので船乗り場にしか行かない。ここに来るのは保護区に興味のある観光客だけ」と説明、顔を曇らせた。

 同基金は一九九六年、保護区にメガネザルの研究開発センターを設け、生態観察や保護、繁殖、市民や観光客らへの啓もう活動を行っている。保護区ではメガネザルに触ることはできないが、長さ約一キロの小道を歩きながら野生のメガネザルを観察することができる。

 フィリピン名ではマオマグと呼ばれるメガネザルの体長は十二│十四センチほどで、手の平にすっぽり収まる。長く垂れるしっぽは体長の約二倍。最大の特徴である大きな目は直径一・五センチ。体に対する目の割合は人間と比較すると百五十倍というから驚きだ。手はカエルのような吸盤状になっており、五メートル以上もジャンプできる。世界的にも希少な霊長類として保護されている。

 フィリピンでは九七年に大統領令が出され、ボホールをはじめサマール、レイテ、ミンダナオ各島で生息が確認されているメガネザルは保護が必要な希少動物として認定された。これによりメガネザルの狩猟や殺害、商業目的の所有が禁じられた。ボホール島でもボホール州観光評議会が船貸し屋に対し、メガネザルの商業利用に反対している。

 約二十匹のメガネザルの繁殖に成功したピサラスさんによると、メガネザルは人に捕らわれると過度のストレスで自分の頭をかたいものにぶつけたり、水の中に頭を突っ込んで自殺することもあるという。「触ってみたいと思うのは人情だが、絶滅危ぐ種にさせないためにも観光客は見るだけにしてほしい」と訴えた。(栗田珠希)