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10月27日のまにら新聞から

メディアの早合点 ドイツ人拉致事件

[ 748字|2014.10.27|社会 (society)|新聞論調 ]

 ミンダナオ地方スルー州でイスラム過激派アブサヤフとみられる武装集団に拉致されたドイツ人2人が5カ月ぶりに解放され、2人にとっての長い悪夢が終わった。武装集団は、要求した身代金2億5千万ペソが支払われたと即座に主張。多くのメディアがその結論に飛びついたのも実に残念だ。

 国軍部隊による武装集団への圧力だけでは、ドイツ人2人は逃れることはできなかっただろう。特に同州の森林地帯で武装集団を包囲するのは不可能に近い。

 欧州が身代金をたびたび支払ってきたという前例もある。シリアの武装集団からドイツ人の人質が解放された今年8月、ドイツ外務省は「国の資金は使っていない」と説明した。しかし、資金源は何も国だけに限られていない。恐らく、今回のドイツ人2人にも、民間の資金が使われた可能性がある。

 解放の2日前、ドイツ人男性はラジオで、「身代金が支払われなければ斬首される」と声をふり絞っていた。交渉期限当日になって武装集団は期限を2時間延長したが、その段階で支払いの段取りは整っていたはずだ。

 アブサヤフの要求は?イラク、シリア領内の過激派「イスラム国」(IS)拠点を攻撃する有志連合からの撤退?身代金2億5千万ペソ--の2つ。実現しなかった?は、見せかけの交渉戦術にすぎない。

 仮に、100万ユーロが支払われたとしても、アブサヤフにとっては大金だ。つまり、支払い額が2億5千万ペソか否かを確認できなかったとしても、「支払われた」という事実がある限り額は問題ではない。現在もまだ外国人ら11人が拘束中である。 

 「2億5千万ペソ」という額が一人歩きしてしまったことで、今後の交渉は前途多難が予想され、また新たな犯行グループ出現の危険を招くかもしれない。(20日・インクワイアラー)

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