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8月25日のまにら新聞から

何のための死か 憲法改正の是非

[ 720字|2014.8.25|社会 (society)|新聞論調 ]

 マルコス元大統領はなぜ戒厳令を布告したのか。なぜなら任期が2期目4年の終盤に差しかかった時、当時の共和国憲法は大統領の3選を禁じていたからだ。戒厳令は、元大統領が権力の座に居座ることを保証した。 

 マルコス元大統領の宿敵、ベニグノ・アキノ元上院議員が亡命先の米国から帰国した理由については、アキノ家だけがその真実を知っている。とはいえ、その理由の1つに、独裁体制に終止符を打ちたいという願望があったはずだ。

 当時、マルコス元大統領が腎臓病を煩っているとのうわさが飛び交い、万が一のことが起きた場合、イメルダ夫人が大統領を引き継ぐという構想まで浮上した。イメルダ夫人は個人的に、生命に危険が及ぶ可能性があると、元上院議員に警告した。しかし、元上院議員は警告を無視したため、今年、暗殺から31周忌を迎えることになった。

 元上院議員の妻、コラソン・アキノ氏は1986年、マルコス独裁政権を打倒して大統領に就任。自由を求めて闘った亡き夫の意志を継いだ。 

 その結果、マルコス独裁政権の二の舞を阻止するため、大統領任期を6年に限定する現行の共和国憲法が成立した。コラソン・アキノ元大統領は退任時、任期の2期目を認めようとする憲法改正の動きに断固反対した。1997年2月の演説ではこう語った。

 「憲法改正はマルコス元大統領が戒厳令を布告した理由の1つである。だから私はここにいる。権力の座に居座り続けたい一部の人間に伝えるために。憲法改正は決して行うべきではない。大統領という地位は偉大であり、何度も就任することがあってはならない」

 アキノ元上院議員の追悼式が行われるきょう、この言葉が共鳴し続けている。(21日・スター)

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