「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-27度
両替レート
1万円=P3,680
$100=P5,595

7月3日のまにら新聞から

伝統的治療法を勧める州知事 コロナより役人と戦う医師たち

[ 789字|2020.7.3|社会 (society)|新聞論調 ]

 気管支系疾患の患者に薬草を煮た水蒸気を吸い込ませる伝統的治療法「トゥオッブ」がコロナ治療に適しているとガルシア・セブ州知事がソーシャルメディアなどで発信したのを受け、地元医師会などがコロナ治療には効果がないとすぐに打ち消す声明を出した。この伝統治療法はコロナの治療に効果がないばかりでなく、感染者が公共の場所などで行うと逆に感染が広がる可能性があるとしている。それに対し「自分たちが稼げないからそんな事を言うのだ」「州知事と同様に信じている医師も多い。保健省だけが違う」など批判の声が集中したという。ガルシア知事も「私のやり方に介入するな」と通達を出した。

 この伝統治療を批判した者は巨大製薬会社と共謀しているとか尊大だとの非難も受けている。でも実際はこのような声明を出す多くの医師たちは研修医であったり、病院に雇われている医師だったりで製薬会社から利益を得ていないし、そもそもコロナ治療で利益を得ている医師などいないのだ。パンデミックに対峙する医療従事者たちは当初、フロントライナーとして涙ながらの感謝の声援を浴びていたが、それらは結局、薄っぺらい感謝で単なるパフォーマンスに過ぎなかった。政府から敬意を払われることはなく、専門家らが訴えてきた感染経路追跡や隔離措置、検査能力の拡大なども満足に実現されていない。ソーシャルメディアで批判者らを逮捕するという政府の威嚇で、非効率な政府を追及できず、十分な防護用具や危険手当などもなく治療に当たらされている。

 さらに保健省は先週、西ビサヤ地域の農村や漁村で活動する医師たちをセブ市の病院に派遣するという通達を出した。地方の基礎的医療を支える人材にも関わらずだ。医療従事者たちはコロナウイルスとの戦いよりもこうした情報の偏りが激しく意図的に無知な指導者らとの戦いで疲れ果てている。(29日・インクワイアラー、ケイ・リベラ)

社会 (society)