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4月18日のまにら新聞から

中国けん制の効果なし 南シナ海の戦争ゲーム

[ 644字|2021.4.18|社会 (society)|新聞論調 ]

 今年の「バリカタン」(比米合同軍事演習)に中国をけん制する効果は期待できない。今回の規模は通常の約4分の1。比国軍参謀総長も「控えめな演習だ」と述べている。南シナ海で中国やベトナムが実際に軍事施設の建設を進めている中、フィリピンが連日行っているのは中国艦船に対する抗議だ。これは国内世論をなだめるためのものであり、効果は薄い。

 比は、常設仲裁裁判所が比の排他的経済水域の主張を認めたことで「勝利」を主張しているが、仲裁裁判所は領土・領海の主権をめぐる問題に裁定を下したわけではない。米海軍の「航行の自由作戦」も儀式的なものに過ぎず、中国を抑制できていない。

 先週、比人取材班が南シナ海で武装中国船に追われたと主張したが、彼らは身分証明書の提示に応じなかったため追い払われたという話もある。この事件を外交危機にまで発展させる前に比国軍の調査を待つべきだ。

 比人の中には、政治的利益のため、南シナ海の緊張を扇動する人々がいる。彼らは南シナ海で対立するたび米海軍が騎兵隊のように駆けつけてくると考えている。米国は中国に対して封じ込め戦略をとっているが、戦争には極めて消極的だ。そして南シナ海の岩礁は比米相互防衛条約の対象外というのが米国の公式見解である。

 中国は長期的なゲームをしている。武力衝突には至らぬまま、中国は可能な限り数インチでも領土を確保し、施設を建設するだろう。我々は今後1千年この小さな岩を争うことになるだろう。(13日・スター、政治学者 アレックス・マグノ)

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