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6月16日のまにら新聞から

比中友情の試金石に 漁船衝突事件

[ 664字|2019.6.16|社会 (society)|新聞論調 ]

 フィリピンの漁船「ギンベル1」がパラワン州沖で9日沈没したことについて比沿岸警備隊は捜査をしておらず、詳しくは分からない。ロレンサナ国防長官によると、リード礁で碇(いかり)を下ろしていた比漁船に中国漁船がぶつかった。比漁船は沈み始めたが、中国漁船は漁師らを救出せずにその場を離れた。幸いなことにその場にいたベトナム漁船が救助したのだという。

 大統領府は、ロレンサナ国防長官が言った「衝突」の事実について知らされた時、ドゥテルテ大統領が激怒したと話したものの、大統領自身は直接的なコメントをこれまで出していない。しかしパネロ大統領報道官は、比の漁師を海上で見捨てることは「野蛮人のようだ」とし、もし中国漁船が故意にぶつかったとしたら、それは「武力攻撃」であり、外交関係を断つ正当な理由になりうると話した。

 漁船を失った漁師を公海に置き去りにすることは、少なくとも友人の行動ではない。比人はリード礁で漁をするあらゆる権利を持っている。2016年の仲裁裁判所の判断によれば、リード礁は比が主権を持っているスプラトリー諸島のうちの三つの地域の一つだ。

 中国の主張する九段線が無効とされた仲裁判断の後、ドゥテルテ大統領は中国政府との関係を無理に改善しようとしたが、両国の経済関係が強化され親善が深まっただけだった。中国は係争のある海上に「民兵」を配備したままで、状況に改善はほとんどみられない。

 比と中国は何世紀にもわたって友人であり貿易相手国であった。リード礁の事件はその友情を試すことになるだろう。(14日、スター)

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