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6月6日のまにら新聞から

真の「美しさ」とは 比のシンデレラ物語

[ 732字|2016.6.6|社会 (society)|新聞論調 ]

 事の発端は、インターネット上に観光客の投稿で掲載された1枚の写真だった。ルソン地方の山奥でニンジンが山盛りにされた籠を運ぶ男性の写真が話題になった。男性は「キャロットマン」として有名になり、今や民間テレビ局GMAと契約を結び、著名デザイナーがデザインするTシャツの専属モデルにもなった。

 それに続いたのが、赤ん坊を抱きながら路上で物乞いをしている最中に写真家に撮影され、やはりインターネット上で話題となった12歳の少女「バジャオガール」だ。ミンダナオ地方出身とみられるエキゾチックな顔立ちが「美しい」と話題に。彼女はスタジオでモデル撮影され、学校への奨学金も獲得した。

 自らの美しさが世間に知れ渡たり、シンデレラ物語のように2人が恩恵を受けたことはとても良いことだと思う。しかし、この出来事を手放しに喜ぶことはできない。バジャオガールはテレビ局のインタビュー中、彼女の苦しい生活や「学校に行きたい」という思いを涙を流しながら語った。

 「ミーハー的」な流行としてではなく、視聴者はバジャオガールやキャロットマンが置かれている本当の状況について考えたことがあるだろうか。物乞いをしているのは彼女だけでない。私たちの周りで物乞いをしている人たちの顔を見てみると、そこにはバジャオガールような「美しさ」があるのではないか。

 報道機関は、キャロットマンのように地方で農業に携わる若者たちの置かれている状況について報道しただろうか。同じようにエキゾチックな顔立ちをしたミンダナオ地方の先住民族は今、迫害を受け、学校や家を焼かれて避難所で暮らしている。キャロットマンとバジャオガールは、今私たちに「真の美しさ」について問い掛けている。(1日・インクワイアラー)

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