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12月21日のまにら新聞から

今こそ大統領は署名を

[ 727字|2015.12.21|政治 (politics)|新聞論調 ]

年金増額法案が通過

 フィリピンでは10年間勤続し、社会保険機構に掛け金を払い続けた退職者に対する年金支給額は毎月わずか1200ペソ、たったの25ドルだ。つまり、退職者に対し1日1ドル以下で生活せよと言っているようなものだ。20年以上勤続した場合でも2400ペソ、つまり50ドルの年金しか支給されていないのである。同機構は年金の掛け金を常に上げ続け、掛け金の送金義務を怠った雇用者を罰しもせず、年金基金を投資運用に利用し、目もくらむような高給と手当を幹部に支給していることを考えると、退職者に対する25〜50ドルの年金支給額というのは納得できるものではない。

 しかし、1200〜2400ペソの年金額を3200〜4400ペソまでそれぞれ引き上げる法案がこのほど、上下両院で承認された。それぞれ2000ペソずつ引き上げたとしても、退職者たちが高騰する生活費をまかなうにはとうてい十分ではないのだが、1997年から一度も改定してこなかった年金額が引き上げられることの意味は大きい。

 法案を提出したのはバヤンムナ政党出身のコルメナレス下院議員。彼が精力的に同僚議員たちや上院議員に働き掛けた。上院ではビリヤール議員が、貧困ラインを定める最低生活費である毎月8022ペソという国家統計調整委員会による数字を挙げ、年金引き上げ法案を支援した。こうして与野党の垣根を越えて議員らが協力して年金引き上げ法案が通過した。

 貧困層にはまったく同情心を持ち合わせない富裕層出身のアキノ大統領は下院議長に対して同法案への拒否権をちらつかせるなど反対の姿勢を示してきた。しかし、同機構の財政的基盤は盤石である。今こそ大統領は同法に署名すべきである。(19日・ブレティン、トニョ・クルス氏)

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