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11月23日のまにら新聞から

三つの情景 APEC首脳会議

[ 714字|2015.11.23|社会 (society)|新聞論調 ]

 18、19日に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の本質を浮き彫りにする「三つの情景」がある。

 首都圏とその周辺地域では、厳重な交通規制などに苦労した市民が多数いたが、国外で報道を見た人々からすれば、西フィリピン海(南シナ海)での軍事的な緊張が高まり、テロへの懸念が強まる中、各国首脳を集結させたフィリピンの外交は評価に値するかもしれない。

 また、オバマ米大統領は過去に2回、APEC首脳会議を欠席している。中国の習近平国家主席は、西フィリピン海の領有権を主張しているため、来比を嫌がっていた。日本の安倍首相などに加えてこの2人の参加を実現できただけでも、今回のAPECは成功と言える。

 さて、首脳会議の本質を明らかにする一つめの情景は、会議に先立って行われたAPEC・CEOサミットだった。中国・アリババ創設者のマー氏も参加したパネルディスカッションで、オバマ大統領は、万全の状態を整えて司会を行った。一方的なスピーチに終始せず、相手の話に耳を傾け、対話を重視する姿勢には、ハイレベルな国際会議の可能性を垣間見せた。

 二つめは、習近平主席が演説したときの情景だ。比人の聴衆を前に領有権問題には触れず、太平洋を「みんなの故郷」と隠喩し、良好な反応を得ていた。その時はまだ、領有権問題の平和的解決への希望があったかのように見えた。

 しかし、三つめの情景を前に希望と現実の隔たりを認識せざるを得なかった。レッドカーペットをぎこちなく歩く習近平主席を無視し、アキノ大統領とチリのバチェレ大統領が会話に没頭していたのだ。その約4分7秒間は、まるで永遠のように感じられた。(20日・インクワイアラー)

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