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8月17日のまにら新聞から

過去の歴史を教訓に 終戦70年記念日

[ 729字|2015.8.17|社会 (society)|新聞論調 ]

 それほど遠くない昔、アジアで最も栄え、軍事大国だった国が資源を求めて拡張主義に打って出た。欧州戦線で戦う同盟国を支援する一方、アジアの周辺国において覇権拡大に乗り出した。西洋列強からアジアを解放するためとして、北東アジアや東南アジア、オセアニアを含む 「大東亜共栄圏」構想を打ち出した。しかし、構想は破滅的な失敗に終わり、日本の侵略に抵抗した膨大な数のフィリピン人やその他のアジア諸国の国民が被害を受けた。

 広島・長崎への原爆投下により日本は降伏し、昭和天皇が人間宣言をし、戦争放棄を国策として選んだ。日本は専守防衛のみに軍隊を使うという、ユニークな平和憲法を採用した。

 日本はかつての敵との関係を調整し直し、20〜30年ほどで世界第2位の経済大国になるまでに繁栄を築いた。今日は第二次世界大戦が終わって70年目にあたる。世界が心配しながら注視しているような軍事力を高めるためのシフト転換を進める日本の安倍晋三首相による謝罪の言葉を、多くの国は期待した。

 かつての大東亜共栄圏と、北東から東南アジアを経由し、インド洋までを結ぶいわゆる現代の中国の「21世紀のシルクロード構想」とを比較せざるを得ない。中国という新しいアジアの大国は日本を抜いて今や世界第2位の経済大国になった。中国本土からはるかに離れ、フィリピン沿岸から200カイリしか離れていないサンゴ礁地帯で大規模な埋め立て工事を実施した。この人工島は浮沈空母と言われ、軍事施設として使われるとみられている。

 21世紀のシルクロード構想には中国が主導するアジアインフラ投資銀行が財政支援している。終戦記念日には侵略の過ちを胸に刻むべきだが、一部の者は忘れたらしい。 (15日・スター)

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