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7月5日のまにら新聞から

水質管理法を真摯に実施せよ 首都圏の水不足問題

[ 808字|2019.7.5|社会 (society)|新聞論調 ]

 首都圏に再び洪水が発生する季節となったが、水道供給が一部の地域でまだ制限され続けており、消費者らの不満がたまっている。今年、首都圏では給水制限が過去10年間で最悪のものとなった。水道会社2社は給水制限措置を巡って多大な罰金も科せられている。一方、ブラカン州やその周辺地域では農民たちが灌漑(かんがい)用水をカットされたとして苦情の声を上げている。国家水資源委員会が首都圏への水道供給を優先するために、灌漑用水向けの水供給を制限したのである。同委員会によると、首都圏の唯一の水がめであるアンガットダムの水位が完全に通常レベルに戻るためにはまだ2カ月かかるという。

 今回の水不足は気象庁によると、「弱い」エルニーニョの影響によるものだという。もし「強い」エルニーニョの影響が今後起きたらどうなるのだろうか。水不足の問題は首都圏における人口急増が背景にある。しかし、人口増と水供給不足の問題は遠い昔に予測されており、2004年に成立した水質管理法(共和国法第9275号)で新しい水源を確保することがすでに義務付けられているのだ。また同法では雨水を貯水する施設の建設も定めている。特に政府機関の建物の地下に雨水貯水施設を建設することが義務付けられていた。

 この法律が制定されて20年近く経っても首都圏の新たな水源はまだ実現していない。ようやくカリワダムの建設が始まったばかりだ。洪水に悩む首都圏で雨水貯水施設もまったく作られていない。水道供給が頼りにならないため、首都圏の家庭では深井戸を再利用する動きも出ている。水をリサイクルする技術も海外では確立しているのに、国内ではまだ本格利用されていない。

 法律や技術はすべてそろっているのに、それらを実施できない。政府がするのは対策本部を作るという掛け声だけ。このような体質を改善しないかぎり、首都圏では今後も頼りになる水道供給は期待できないだろう。(1日・スター)

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