「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
35度-24度
両替レート
1万円=P3,670
$100=P5675

4月30日のまにら新聞から

イベルメクチン無料配布 議員や医師らがケソン市で

[ 1221字|2021.4.30|社会 (society) ]

下院議員らと医師が、首都圏ケソン市でイベルメクチンを無料配布

医師による診断後に受け取った無料のイベルメクチンを手にするラモン・デルロサリオさん=29日午前10時すぎ、ケソン市マタンダンバララで岡田薫撮影

 新型コロナの治療や予防に効果があるとされる抗寄生虫薬イベルメクチンが29日、首都圏ケソン市で無料で配られた。無料配布を実施したのはマイク・ディフェンサー下院議員やロダンテ・マーコレタ下院副議長をはじめ与党の議員や医師ら。これに対して、ゲバラ司法長官は「コロナ治療薬としてのイベルメクチン配布は食品医薬品局(FDA)関連の法律に違反しているように見える」と指摘した上で、「配布者を逮捕するかどうかは国家警察次第だ」との認識を示した。

 オニックス・クリソロゴ議員(与党PDPラバン)は、父のビンボン元下院議員と共に参加。自身の選挙区であるケソン市は新型コロナに最も深刻な影響を受けた地域で、配布会場となったバランガイ(最小行政区)マタンダンバララは「最も感染者が多く、現時点で170人の未回復者がいる地区だ」と説明。「一番効果があるワクチンが行き届くまでの間、予防薬としてのイベルメクチンを認めるべきだ」と主張した。

 「フィリピンの関心を持つ医師と市民たち」代表のベニグノ・アグバヤニ医師は「昨年9月にイベルメクチンがペルーで使用され、感染数が減った。その後、12月に大統領が代わり、その薬の使用停止を言い渡すと、たちまち感染が増加した」との事例を紹介。「世界中で52もの研究がなされており、一定の効果は検証ずみだ」と述べた。

 イベルメクチンの服用を望むこの日の志願者は事前に登録を済ませた高齢者35人。会場では医師4人の診断を受け、処方箋をもらった後、後方のブースで1人10錠の薬をスタッフから受け取っていた。新型コロナを発症している人はいなかった。

 同市内に住むラモン・デルロサリオさん(72)は、前日に無料配布をラジオで知って申請。「朝早くに車でやって来た」と話す。処方箋には2日間、夜間に1錠ずつ服用し、2週間の間隔を置いて再び同様に服用するよう書いてあった。「できれば息子にも分けてあげたい」と携帯電話を握りしめた。

 マタンダンバララで生まれ育ち、バランガイ職員として働くロマノス・グレンダさん(43)は「バランガイの人口は7万人を超えるが、希望する住民の家に配布していくことを考えている」と述べた。無料配布は今後、ケソン市各地で実施する予定という。

 ケソン市のベルモンテ市長は今月8日、テレビ局の取材に対し、イベルメクチンを推奨するディフェンサー議員について「2022年選挙でケソン市長を狙っており、実は政治的問題でもある。医薬品の安全性と効果を確認できるのはFDAだけだ」と批判していた。

 ベルヘイレ保健次官は先に「イベルメクチンをコロナ薬として配る行為は共和国法第9711号や2009年のFDA法に違反している」と言及している。FDAがイベルメクチンのヒトへの使用を認めているのは、現時点では特別使用許可を取得している5病院のほか、医師の処方箋に基づいて薬剤師が調合した場合に限られている。(岡田薫)

社会 (society)