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6月28日のまにら新聞から

海上民兵組織を隠蔽する比政府 比漁船衝突事故の背景

[ 817字|2019.6.28|社会 (society)|新聞論調 ]

 フィリピンの漁船が中国船に衝突された際、比政府高官が事実を修正しようと躍起になった。ロレンサナ国防長官は、事故が発生した6月9日が比中友好の日だったため、当初、発生日を6月10日に変更しようとしたとされる。在比中国大使は衝突したのが広東省の漁船だったと認めたが、ピニョル農務長官は被害を受けた漁民たちの口をふさぐごとく、衝突したのが本当に中国船かどうか「漁民たちには確かではない」と言ってみせた。

 大統領の家来たちが事故を無視しようとしても、我々の最大の武器は真実を語ることである。中国の第3の海軍と呼ばれる人民海上民兵組織の存在に関する研究は蓄積が進んでいる。この第3海軍は、中国海軍と中国沿岸警備隊に次ぐもので、2016年には約600万人の漁師と2600隻の遠洋トロール漁船を備えていると推定されていた。中国海軍が漁民たちをリクルートして組織し、彼らの漁船を使って作戦を行うとされる。中国沿岸部で漁獲が減少するにつれて、この民兵組織に加わる漁民が増えているという。

 米国の研究者によると、彼ら海上民兵は高圧放水砲を持ち、船体を補強して相手船に突撃し、武器も備えているという。海軍司令官の命令に従い、領有権を争う海域で中国政府のために奉仕するのだ。さらに軍人を一般漁民のように装わせて派遣し、戦争に訴えなくとも地理的な影響力を拡大させる。まさに「戦わずして勝つ」という兵法だ。

 この海上民兵は過去に多くの海洋事件を起こしている。1974年にベトナムから西パラセル諸島を奪い、78年には尖閣諸島に侵入し、2012年にはフィリピンからスカボロー礁を奪っている。フィリピン史において最後に見られた背信行為は、第二次世界大戦中のマカピリと呼ばれる対日協力者によるものだったが、今日では比政府自らが中国の代理人となって、この海上民兵組織の隠蔽(いんぺい)に加担しているのだ。(24日・インクワイアラー、アントニオ・モンタルバン)

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