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6月13日のまにら新聞から

健全な野党を持て 与党連合への鞍替え

[ 740字|2016.6.13|社会 (society)|新聞論調 ]

 民主国家は強力でかつ信頼に足る野党勢力を持たないといけない。民主主義にとってチェック・アンド・バランスが効果的なシステムだからだ。しかし、ドゥテルテ政権が誕生しようとする今、そのような野党の姿が見えない。

 フィリピンの複数政党制は実体がない。大統領選に勝利した候補の出身母体がどんなに少数政党であっても選挙後に多数派になるのがこの国のしきたりだ。今回の選挙で言うと、まずビリヤール元上院議長が率いる国民党(NP)が、次期大統領が所属するPDPラバンと連携した。かつての与党だった自由党は議員が大量流出して形骸化し、ポー議員を側面で支えた民族主義者国民連合(NPC)も選挙後に多数派に合流した。

 一方、ドゥテルテ氏も公約を実現するために強力な与党連合を必要としている。死刑の復活や経済条項を含む憲法改正、連邦制の導入など大きな課題が控えているからだ。連邦制の導入は次期大統領の地元のミンダナオ地方でも封建的な大土地所有者たちから強い抵抗があるだろう。憲法改正に伴う外国人投資家への規制緩和についても強力なロビー活動が行われるだろう。しかし、ロビー活動に対しては、次期政権は必ず国民の信を問う必要がある。雇用を創出して貧困をなくすことがそれら政策の究極の目標であるからだ。

 次期大統領が唱える犯罪集団の撲滅を含む過激な治安政策も、今は国民は黙っている。しかし、警察が一度、犯罪者などの殺害に喜びを感じ始めるとコントロールが利かなくなる恐れがある。ドゥテルテ氏が警察をコントロールできなくなったとき、国民の支持は一夜にして離れるだろう。国民の支持を失えば、ロブレド副大統領が野党のリーダーとして浮上することも十分にあり得る。(10日・スター、アナマリー・パミントゥアン氏)

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