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10月26日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 595字|2015.10.26|社会 (society)|ハロハロ ]

 イスラエル軍とアラファト議長率いるパレスチナ解放機構(PLO)がレバノンで戦火を交えていた1980年代のことだ。避難先のベイルートのホテルの一室で英国人フリーランサーとシーバスを飲みながら話し込んだ。双方とわるくない関係のドルーズ派イスラム教徒指導者ワリド・ジュンブラットとのインタビューは、各社が是非ものにしたい「高嶺の花」だった。米誌プレイボーイから特派されたこの記者はインタビューに成功、話を聞こうと酒に誘った。

 話を聞きながら夜も更け、したたか酔いがまわってきた。突然、彼はかばんから1冊のぶ厚い本を取り出すと、涙を浮かべながら語った。「おれは中東でこの本1冊を書き上げた。だが女房に離婚されてしまった」。本当の苦労を知らない私がフリーランサーの厳しさと英国社会の断面を見た瞬間だった。出張中に奥さんのところに自転車で足繁く通った男がいたらしい。酔いも手伝って彼は毒舌を繰り出し、部屋の空気は重苦しくなった。

 プレイボーイ誌が来年3月からヌード写真の掲載を見合わせることになったらしい。かつて数百万部売り上げた「男の雑誌」だが、硬派のインタビューをものにすることでも知られていた。プレイボーイ誌の特派だからジュンブラットは応じたのかもしれない。帰国後、日本版を見ると、インタビューは3ページにわたって掲載されていた。気持ちが楽になった。彼は元気だろうか。(実)

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