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12月22日のまにら新聞から

奪われた無実の命 パキスタン学校襲撃

[ 747字|2014.12.22|社会 (society)|新聞論調 ]

 パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州ペシャワルで16日、陸軍が運営する学校を武装グループが襲撃、銃乱射や自爆攻撃により生徒ら148人が死亡した。武装グループは、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」。報道官は今回の襲撃について、「アフガニスタンとの国境沿いに住む少数民族を攻撃したパキスタン軍に対する報復」と正当化した。

 英国内の報道によると、犠牲になった生徒はパキスタン軍の運営する学校の子どもたちで、大半が16歳以下。標的にされた犠牲者の社会的立場を考慮すれば、「報復」とするTPP側の主張がまちがっているのは一目瞭然だ。

 ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさん(17)も約2年前にTPPの襲撃に遭って重傷を負った。今回の事件を受け「世界中の数多の人々とともに、犠牲となった子供たちに哀悼の意を捧げる。私たちは決して(テロに)屈しない」と決意を新たにした。

 武装グループによる自爆攻撃は、チェチェンで2004年に起きた学校占拠事件を想起させる。銃撃戦に巻き込まれて死亡した子供らは300人以上。当時の犯行声明も「我々に攻撃を仕掛ける軍の家族への報復」と述べた。

 09〜12年にペシャワルでイスラム原理主義勢力が襲撃した学校は800校を超える。数ある学校の中でも、女子校は格好の標的になる。実際、マララさんへの攻撃は、原理主義勢力による「戦略」の一環だった。1週間前の悲劇は映像を通して嫌というほど伝わってきた。息子を失った父親はこう嘆いた。「無実の子どもが墓場に行ってしまった。私も一緒に入りたい」。

 テロリストの手によって無実の人間の命が奪われる事件を目の当たりにするにつけ、震えるほどの怒りがこみ上げてくる。(19日・インクワイアラー)

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